第2話 距離
それから僕はその公園で如月麗愛とよく会うようになった。
と言っても意識的に時間を合わせたりしているのではなく、なんとなくな気持ちで行ってみると必ず如月麗愛はそこにいるのだ。
そして今日も僕は大学を休み、如月麗愛と公園で駄弁っていた。
春の陽射しが暖かく過ごしやすい時期。
いつものように子供達の遊ぶ姿を見ながら僕らはベンチに腰掛け会話していた。
「暁月さんはなにか趣味とかってありますか?」
白髪ショートヘアーの美少女――如月麗愛が僕を見つめ問うた。
こういう時、堂々と人に言えるような趣味が無い僕は対応に物凄く困る。
「そうだな…、スポーツジムに通ったりとかかな」
「えぇ!!凄いですね!!!」
天使の微笑みを浮かべながら如月麗愛が少しオーバーなんじゃないかと思うくらいのリアクションを見せてきた。
「そんなことないよ。ただ体を動かすのは昔から好きなんだ。」
趣味とまではいかないが、実際にスポーツジムには月に二回程通っている。
体を動かすのが好きなのも嘘じゃない。
「なんか格好いいです!憧れます!」
「いやいや全然だよ。」
ものっすごく目をキラキラさせてるよこの子…。
「如月さんはなにか趣味とかあるの?」
「えっと、その前に出来れば名前呼び捨てで呼んでもらっていいですか?私の方が絶対年下なので。」
確かにどう見ても僕より年下だろうな。
17歳くらいか…。
「凄いですね!ドンピシャ17歳のピチピチのJKです!」
「あれ?今声に出てた?」
「いいえ!でも私、顔見てればその人の考えてること大体分かっちゃうんですよね〜!」
「本当に?それは凄いね。」
「もー、その顔は信じてませんね?」
「じゃあ今僕が考えてること当ててみて?」
「分かりました!じーーっ」
思いっきり擬音語を口に出しながら上目遣いで僕を見つめてくる。
これは………可愛過ぎる。
あざとさが全く無い上目遣いなんて初めて見た。
いや、そもそも上目遣い自体初めて見たが。
「……私のこと可愛いって思ってますね?」
「っ!!??」
顔を少し赤くし、俯きながら答える如月麗愛。
そして驚きのあまり生まれて初めてぐらいの大きなリアクションをする僕。
「……せ、正解ですね?」
「……正解。」
「……………。」
「……頼むから何か喋ってくれよ、麗愛。」
「っ!!」
先程の僕と同じように思いっきり大きなリアクションをし、顔を上げる麗愛と目が合った。
その目は大きく見開かれ、顔は先程よりも赤くなっていた。
「ず、ずるいですよ!今のタイミングは!」
「麗愛が名前呼び捨てにしろって。」
「そうですけど……。もぉ……。」
まるで茹でダコのように顔を蒸気させ、俯く麗愛。
そんな麗愛を見て僕はなんとなくこの時間がずっと続けばいいなんて柄にもないことを考えていた。
ここまで他人との会話を楽しいと思ったのは生まれて初めてだし、なにより落ち着くのだ。
まだ話し始めてから一週間くらいだというのに。
「あっ、そろそろ私帰らないと!また会えたら話しましょうね!」
「会えたらって…。僕がいつも来ると絶対にいるよね、麗愛。」
「……もしかしたら運命の出会い、なのかもしれませんね?」
「ははっ、運命、ね。」
運命なんて存在する訳ない。
分かっていても何処か麗愛のその言葉に嬉しいと思ってしまっている自分がいた。
「じゃあまた、暁月さん。」
「うん。またな、麗愛。」
こうして、僕らはなんとなく公園で話すようになり、なんとなくお互いを知っていき、そしてなんとなく心の距離を縮めていったのだった。
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