第7話
「これが私たちのおばあちゃん達の話。」
紗優は黙って聞いていてくれていた。今は涙まで流してくれている。
「ありがとう話してくれて。わかばちゃんたちもう1つ話があるって言ってたけど先に私が話させてほしいんだ。」
顔に涙のあとを付けた紗優が言う。
「わかった。私達も聞くよ紗優の話を。」
そして紗優は自分のことを話し始めた。
「私は親戚達の中では産まれてきては行けない子供だったんだ。それはね、お父さんが奴隷でお母さんはその奴隷の持ち主。その二人の間に産まれたから親戚の中では嫌われてるし産まれたことを祝福されなかった。」
私たちはその事を聞いて胸が締め付けられる。でも紗優の話はまだ続く。
「それでね私は産まれて来る前に堕胎させる話が出てたの。でもお母さんは私を産むと言って家を飛び出たの。その時に奴隷だったお父さんを連れて。でも現実は甘くなかった。家を出てすぐにお父さんは殺された。普通の人からしたら殺処分だね。そのかわりお母さんは私を産むのを許されて家に戻された。そして私の出産予定日の日陣痛が来たお母さんは車に乗せられて病院へ向かったの。」
紗優は少し涙ぐみお茶を飲んだ。私には自分の気持ちを押し込めているように見えた。
「さゆちゃんそんな事があったんだね。でも私たちはさゆちゃんの過去がどんなことでも態度を変えたり他の人たちに言いふらさない。さゆちゃんが私たちの話を受け止めてくれたみたいにね。」
幸の話に私も頷く。そして紗優は再び話し始めた。
「私のお母さんを乗せた車は病院へ向かう途中事故にあって運転手は即死、お母さんは自分を諦めるか子供を諦めるか行けない怪我をしたの。そこでお母さんは私を産んでくれた。自分の命と引き換えに。その後はお母さんの妹の叔母さんが今も育ててくれてるの。」
紗優の話は想像を超えるほどの衝撃を私たちに与えた。私たちは紗優にかける言葉も見つからず何も言えなかった。
「だから私は奴隷制度が無くなればいいと思ってた。そうしたらね入学式の時幸ちゃんとわかばちゃんが奴隷が嫌いって言うからもしかしたらって思って声をかけたの。」
「紗優ちゃんの叔母さんはさゆちゃんを殺そうとしたりしなかったの?」
「うん。叔母さんは今まで私を大切に自分の子供のように育ててくれたよ。それに生まれたての私が施設に入れられそうになった時私が育てるって引き取ったんだって。ごめんね長くなってわかばちゃんたちのもう一つの話を聞いてもいい?」
紗優は自分の話を終わらせ私たちの話を聞こうとした。でも紗優の話が終わっても私はもう一つの自分の話を始められなかった。
「……ごめん紗優。ちょっと話せそうにないかも……。別に紗優の話を聞いてこれ以上話したくないってわけじゃないけど話せそうにない……。」
「そっか。ならまた今度聞かせて。話せるまで待ってるから約束ね。」
紗優は話すと言っていたのに話さないと言い出した私を怒ったりしたなかった。紗優の約束に私は頷いた。
そして私たちの間で無言の時間が続き幸が一番に口を開いた。
「そういえば紗優ちゃん昨日学校に誰かと一緒に来てたけどお姉さん?」
幸が話を明るい方へと変えてくれる。
「ううん。中学校からの友達。良かったら明日連れてきていい?紹介したいな。」
さっきまでの紗優とは全く別な明るい口調で話し始める。
「連れてきてもいいんだけどどんな人?」
「静かだけどすごく可愛くて真面目な子。まあ会ったらわかるよ。」
紗優が笑いながら言う。
「明日紗優が連れてくるの楽しみに待ってるよ。」
私たちのいるこの家は幸のおかげで暗い雰囲気から明るくなった。話さない事を許してくれた紗優にはいつか話さなければ行けないと思いながらも私は紗優に甘えてしまった。だから次はちゃんと話そうと思う紗優との約束だから。
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