第5話

 若葉は語り始めた。

「これは、50年くらい前の話。奴隷法に幸せを壊された人の話。」


 終戦から20年 奴隷法施行1年前 希望18歳


 栄希望は考えていた。これからこの国がどうなるかを。テレビやラジオで報道されている奴隷法。それは国が国民から人を買い取りそれを奴隷として売るという人として間違っている政策。そのために今、国はたくさんの国民から人を奴隷として買い集めていた。買われた人は戸籍、人権は消え奴隷として生きる。売られた人はもう人として見てもらえなくなる。奴隷として子供を売る親は沢山いた。そのため小学校や中学校から子供が半分以上も消えた。国が奴隷として人を買い取ったことで貧困にあえぐ人々がほぼいなくなった。私の家は裕福な方だったから私が奴隷として売られることはなかった。でも私の友達はほぼ全員自分の親に売られた。でも売られていない友達も残っている。私の一番の親友西門優奈。彼女は売られなかった。それにいつも私のそばにいてくれる。

「のぞみお待たせ!」

  急に後ろから来る衝撃。どうやら奴隷法のことを考えているうちに待ち合わせの時間を過ぎている。

「優奈また遅刻だよ!もう10分も過ぎてる!」

 優奈は私を呼び出していたのにも関わらず私を10分も待たせている。さすがの私でも怒らずにはいられない。

「優奈!何時も5分前には待ち合わせって言っているでしょ!」

「のぞーごめんってばー。」

 優奈は私の話を聞き流す。いつものことだから話を止め目的地に向かうことにした。

「それで今日はどこ行くか聞いてないんだけどどこ行くの?そろそろ話してくれてもいいんじゃない優奈?」

「図書館!そろそろ将来に向けてしっかり勉強しなきゃだしね。」

「だから勉強道具持ってくるように言ったのね。行く場所くらい教えてくれてもいいのに……」

 私たちは図書館に着くといつも座る場所に向かい勉強を始めた。そして私はふと思ったことを優奈に聞いた。

「優奈は奴隷法のことどう思う?」

「そうだね……私は嫌だな。前まで仲良かった友達を人として見なくなるんでしょ。そんなことは人としても間違っていると思う。」

「そっか私も同じ。でも私は優奈が奴隷にならなくて良かった。小さい頃から一緒にいるのに奴隷と奴隷じゃない人として別れるのが嫌だった。優奈じゃない人達が奴隷になって良かったっていう気持ちがあるんだ。最低だよね私。」

「そうだね。のぞは最低だね。でも奴隷として連れていかれた人達に対して奴隷じゃない人ができることを私たちでできることを探そう。それがのぞにできる償いだと思うよ。」

 優奈はたまに抜けている所があるけどそれと同じくらい稀に凄いことを言う。だから何かを相談する時は優奈に言っている。優奈に言われたことは間違いだったことは無い。

  私は奴隷の人達になにかできることを探すことを決めた。

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