第4話
「幸ちゃーんこれここでいーい?」
あの話のあと紗優は幸の引越しを手伝っている。
「紗優ちゃんは元気で働き者だねぇ。私すごく助かるよ。」
「おばあちゃんみたいなこと言わないでよ幸ちゃん。」
幸と紗優は不思議な雰囲気を出しながら荷物を運んでいる。
「二人ともなんかのほほんってしてるね。」
「じゃあ若葉ちゃんものほほんってしようよ!のほほん若葉ちゃん見たい!」
相変わらず幸はわけのわからないことを言っている。
「紗優大丈夫?疲れてない?お客さんなんだし休んでてもいいんだよ。」
「ううんわかばちゃん。こう見えても私体力には自信あるんだよ!それに2人となにかするの楽しいし!」
紗優は触れたらすぐ壊れそうな華奢な体つきなのに元気よく働いてくれている。どこからそんな元気が出てくるのだろう。
「そっか。でも倒れないように気を付けてね。疲れたら休んでていいから。」
「うん。わかばちゃんありがとう。」
会話を挟みながら私たちは少しづつ引越しの作業を進めて行った。
引越しの作業が終わり丁度いい時間になってきた。
「紗優今日は引越しも手伝ってもらったし夜ご飯食べてってよ。幸が全部作ってくれるしさ。」
「え!?私作るの!?」
「今日幸がご飯作る当番だよ。昨日は私作ったし。」
幸は納得出来なそうな顔でエプロンを付け調理を始める。
「それじゃあお言葉に甘えてご馳走になろうかな」
紗優は笑いながら言った。そして紗優と私は幸の料理をする音を聞きながら話をした。
そうしてる間に時間が経ち幸が食卓にご飯を運んできた。そこからは幸を含めて話をしていた。ご飯も終わりに近付いた時紗優が話の流れを変えた。
「わかばちゃん自己紹介で奴隷が嫌いって言ってたけどなんで奴隷が嫌いなの?それに若葉ちゃんと幸ちゃんこんなに広い家なのに引越しの作業を自分たちでやってた。普通の人なら全部奴隷達にやらせてる。ここの家に来てから1人も奴隷を見てない。だからわかばちゃんの奴隷嫌いは皆の嫌いとは違う気がするの。良かったら教えてくれないかな?」
純粋な疑問だろう。紗優は私たちにはとても答えづらいことを聞いてきた。
「教えるのはいいんだけれどこれを聞いて紗優が嫌な気分になるかもしれないし私達が上手く話せないかもしれない。それでも聞きたい?」
「聞きたい。せっかく友達になれたから隠し事はしたくない。わかばちゃんのあとに私も私の隠してることを全部言うよ。わかばちゃん達の話がどんな話だろうとしても私はわかばちゃんの友達でいるよ。」
紗優はそう言った。だから私は紗優を信じて見ようと思う。誰にも言ったことの無い話。私たちの昔の話。
「わかった話す。」
「若葉ちゃん……」
幸が心配そうに私を見つめる。
「紗優聞いてほしいんだ。知って欲しいんだ。私達のおばあちゃんのこと。私達の家族の事を。 」
「うん。聞くよ私。わかばちゃんのこともっと知りたいから。」
「紗優に話すことは二つある。一つ目は私たちのおばあちゃんの話。二つ目は私たちの約束の話。話せば長くなると思うんだけどどうする?今日は泊まってく?それとも別な日に話す?」
「私はすぐにでも聞きたい。でもお泊まりになると私だけじゃ決められないからお母さんに電話してみるね。ダメだったらまた明日わかばちゃんの家に来ていいかな?」
「私たちはどっちでも大丈夫だよ。話すって言ったからにはちゃんと伝えたいから。」
「それじゃあ私電話してくるね。」
紗優はそう言い残しリビングから廊下へ出ていった。紗優が廊下へ出て少しの間リビングは静まり返っていた。静かな空間で幸が先に口を開いた。
「若葉ちゃんのおばあちゃんのことを話すのは大丈夫かもしれないけどね私たちが昔見た事を話すのは私は反対。若葉ちゃんあれを見たあと体調崩して入院して私すごく心配したんだよ。今また思い出して口に出したらまた体調悪くなるんじゃないか私心配なの。だからそれだけは話すの止めよう?」
幸は自分が聞きたくないからではなく本当に私のことを心配して言ってくれている。でも私は紗優に話したい。少しでも私たちの気持ちを知って欲しいから。それに一度言ったことは変えてはいけないと言われてきたから。
「大丈夫だよ幸。昔みたいになったりしないよ。私だって成長したんだしね。だから大丈夫。もうあの時の自分と向き合わなきゃいけないからね。」
「若葉ちゃん。駄目そうになったらすぐ話をやめてね。それだけは守って。」
私と幸が約束をしていると紗優が戻ってきた。
「お母さんがいいって言ってたから今日は泊まらせてもらうね。お世話になります。」
紗優はさっきまで座ってた席に座り直した。
「じゃあまずは私たちのおばあちゃんの事から話すね。私たちの奴隷制度嫌いはここから始まっているから。」
そして私は語り始めた。
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