ー7ー

 その頃波那は一人駅に向かっていたのだが、少し気分が悪くなってしまい公園のベンチで休んでいた。

「やっぱりな、そんな気がしてたんだ」

 そこへ彼を追い掛けてきた沼口がやって来て、そっと隣に腰掛けた。

「どこか店に入らないか? ここにいるのは寒いだろ?」

「うん……でも何か食べたい気分じゃないんだ」

「すぐそこ国道だろ? ファミレスあるからドリンクバーでやり過ごそう」

 二人は国道沿いのファミリーレストランに入り、ひとまず暖房とホットドリンクで体を温める。沼口は既に仕事を終えている沙耶果も誘い、現在車でこちらに向かっているそうだ。

 波那は自身の言い草に多少の後悔をしていた。畠中に好意を持っている訳ではないのだが、『嫌い』という言葉を使う必要なんて無かった……そう考えると何だか申し訳なくなってくる。

「ちょっとキツい言い方しちゃったかなぁ?」

「あれ位ハッキリ言ってやればさすがに分かるだろ? 普段の態度考えたらまだお釣り出るぞ」

「そおかなぁ?」

 彼はこんな時に限って畠中の別の一面を思い出してしまう。子供に見せる優しい表情、人参をよける子供っぽいところは嫌いではないのに、何も全否定するような断り方をしなくても良かった。そう考えれば考えるほど後悔の念がむくむくと膨れ上がっていった。

「お灸据えてやった位に思ってりゃ良いと思うよ、俺は」

 沼口の楽観的な発言に渋い表情を見せる波那に、悪いと思いながらもついつい笑ってしまう。

「それでも気になるなら仕事始めに謝っちゃいな」

「うん、そうする」

 波那はようやく笑顔を見せて頷くと、沼口はメニューを見始める。

「腹減ってきたから何か食べよう。波那は?」

「さっきの店でデザート食べ損ねちゃった。少しだけ甘いもの食べたい」

「女子じゃん」

 苦笑しながらも元の明るさに戻った波那に安心した沼口は、仕切り直しと合流してきた沙耶果も交えての食事を楽しむことにした。

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