第9話

 ――帰りましょう

 天音の言葉の通り。

 いつも通り。

 最寄駅まで歩いて、一緒に同じ方面の電車に乗って、それぞれの駅で降りる。

 電車の中では、少しだけおしゃべりもして。

 いつものように、他愛のない話を、楽しもう。


 二人は同じことを考えながら、一緒に昇降口にやって来た。

 そして、靴を履き替えて、校門を目指す。


 天音は、話さなくても良いと言った。

 虹に何があったのか。


 そう言われて、虹は初めて思うのだ。

 ――もう少し、落ち着いたら、話したくなったら。

 どちらにせよ、いつかは、この後輩に何があったのかを話そう。

 実は部活の事だと。部員でスランプの奴がいるのだと。相談に乗ってやれない自分が情けなくなっていたのだと。

 そしてその時。少しでも自分の機嫌が良かったなら、

 ――今日の事を謝って、礼を言って……。

 彼女の好きな、ホットミルクをまた、奢ってやろう。

 いつか、彼女に――


 一人だった自分を救ってくれた、そのことに礼が言えるまで。


 彼女との関係が、続きますように。



                                END

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コーヒーくんとミルクちゃん。 春顔 @writer_harukao

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