第4話
苦しんでいる先輩を、青山虹を支えられなくて、泣いていると思いたかった。
そして、それもまた、間違ってはいない。嘘ではない。
けれど、それが全てでも、正しい訳でもない。
天音はそう、気付いてしまったのだ。
自分が今、一番悲しい事、辛い事。
そう、自らに問い掛ける。
自分の無力さを思い知った事。
先輩に、話して貰えなかった事。
先輩を、支えられなかった事。
失敗した事。――先輩を、追い詰めた事。
先輩に、突き放された事。
要因は、色々と考えられる。たくさん、あるだろう。
でも、やっぱり……。
先輩に突き放された事を思う
そして、今自分で考えた要因も、先輩に関する事ばかり。それはある意味、当然の事かも知れなかったが、天音は、最悪の結論に辿り着いた。
――先輩に、突き放されたくなかった。
それは、天音にとって、あまりにも自分勝手としか思えない、最悪の
――私、最低だ。
こんな自分勝手な人間に、虹が〝何か〟を話すわけも無かったと、今の天音は思う。
美術的センスに優れる虹は、それだけ繊細な部分があった。他人の心にはいつも、そして人一倍敏感だった。取材を通して、天音はそれを知っていた。
「話してくれるわけ、無いじゃない……」
天音は一人、廊下で呟いた。
ふっと、自嘲気味に笑い、彼女は全てを諦めたような光の無い瞳で、昇降口を目指した。
昇降口まで、あと少し。そこに着いたら、靴を履き替えて、家に帰ろう。
もう天音は、それしか考えていなかった。
暗い気持ちが、間もなく晴れることを、彼女はまだ――知らない。
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