第47話 下剋上

「死ぬ前の晩、言っていたんでしょ?逃げることは出来ない。死んだ方がマシだ――って。画家の人と同じですよ。自分を変えることは出来ない。だから死んだ」


 先生は黙っている。無表情だが、悲しそうに見えた。


「理久くんは先生と話して、将来の自分と、これからどういう風な目に遭うのかを察してしまったんでしょうね」

 話を聞く限りではその少年は、かなり頭のいい人みたいだったから、先生の表情や言葉からどれだけ悲惨な人生を生きたのかを推理したんだろう。そして、自分と似ている境遇だと思い、そのことに苦悩した。


「そしてそれをばらばらにしたのは史郎ですね。どうして理久くんの死体を見つけたのか分かりませんが、見つけた史郎はそれを利用しようと思った。そっちの方が箒ちゃんが喜ぶから」


 先生は顎に手を当てて考え事をしている。昔のことを思い出しているのかもしれない。


「えっと、やっぱ間違ってますかね?」

「いや、違うよ」

「じゃあ合ってますか?」

「違う」


 意味不明な会話になって、私は訳が分からなくなった。


「多分理久くんが自殺したってところまでは合っているだろうね。私も納得した。でも解体した人物は違う。そうでなければ、先生の発言が説明できない」

「家政婦さんですか?」


 先生は首を横に振った。


「先生だ……」



 先生が先生と言ったので、一瞬こんがらがった。でも、すぐに影が薄かったあの人だと気づいた。

「ちょっと電話してくる」


 先生はそう言って、急いで事務所を出て行った。

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