第34話 妄想

 夢を見た。平穏な日常を生きて、友達を作り、仕事も大変だけれどなんとかちゃんとこなしている、そんな私の夢を見た。


 同窓会があって、高校の頃の友達がたくさん集まって、お酒を飲みながら思い出話に花を咲かせている。


 そこには死んでしまったはずのクラスメイトもいて、皆幸せそうに笑っている。こんな道もあったのかもしれないと、微笑みながら思った。


 でも夢だと私は分かってしまったから、いつかは目覚めてしまうのだと知っていた。

 それでも、ずっとこうしていたいと思ってしまった。きっとこの世界では両親も生きていて、私の性格は歪むことが無く、さぞ幸せに生きているんだと思ったから。


 私はなぜかもうすぐ夢が覚めると分かった。この幸せで、残酷な夢ももうすぐ終わると知った私は、一言「ごめんね」と言った。


 クラスメイト達はきょとんした顔をしている。それでも私は謝った。


 何に対する謝罪なのかも分からないのに、ただ言い続けた。


 そして私は夢から覚めた。

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