第15話 来訪

 私は箒ちゃんとの談笑を終え、自分の部屋に戻った。

 歩いているとき、上手くできただろうかと考えていた。箒ちゃんの質問にちゃんと答えられただろうか。

 確証はない。不安は残る。あの子をちゃんと満足させられただろうか。

 でも大丈夫だった。そんな風に上手くいかず、ちゃんと生きられないことなんていつものことなんだから。


 自室に入って、クローゼットに入っていた寝間着とタオルを持って浴場に向かった。

 浴場には誰もいなかった。多分皆、私が談笑をしている間に入浴を終えたのだろう。大浴場というほどの広さはなかったが、独り占めするには勿体ないくらいのお風呂だった。

 私は湯船の中で足を延ばし、疲れを吹き飛ばした。


 入浴を終えた私は部屋に戻って、ベッドで横になった。そして、豪華な装飾が施された天井を見つめて、溜息をついた。

 その時、誰かがドアをノックした。

「舞ちゃん、こんな時間にごめん。ちょっと話したいことがあるんだ」

 扉越しに理久くんの声が聞こえた。少し落ち込んでいる様子だった。

「どうしたの?」

 私は彼がこんな風に落ち込むことを不思議に思いながら扉を開けた。

「なんかさ、考え事がぐるぐる回って眠れないんだ・・・・」

 私に気を使って申し訳なさそうな顔をしながら、理久くんは恥ずかしそうに下を向いていた。

「そっか、ちょうど私も少し寝付けなかったんだ。ちょっと話でもする?」


 私は自分にできる精一杯の優しい微笑みを浮かべて、理久くんに聞いた。

 理久くんはこくりと小さくうなずき、照れ笑いをした。なんだかんだ言っても、私より優れた知性を持っていてもまだ子供なのだ。まあ私も大人とは言えないかもしれないけれど。

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