第106話 せきゅりてぃ

「それで・・・いったい何があったのですか?」


神々に尋ねる。


「君は・・・ファンド君。サモパラの制覇達成者だね。まずはゲームクリアおめでとう」


白髪の老人が、口を開く。


「そして、何があったか・・・だが。不甲斐ない事に、奴等にシステムが奪われてしまってね・・・犯行声明としては、プレイヤーの救済を謳っているが、実際にはどうなるか・・・ファンド君、申し訳無いが、奴等からシステムを取り返して欲しい」


うーむ・・・

やはり状況が分からない。


「拉致されたプレイヤーの解放を掲げているのなら、とりあえず様子を見る訳にはいかないのですか?」


そりゃ、神様側としては面白く無いだろうけど、俺はプレイヤー側だよ?


「それは問題が有る。システムは一見、独立して動く様に見えるが、実際には我々が適宜神力を補充しないと、暴走や停止をしてしまう・・・この世界は人の深層心理の底に間借りしておる。そうなれば、人類は二度と感情を持てないか、二度と眠りから醒めないか・・・」


「・・・分かった、協力する」


脅しじゃないか。


「別の危険性としては、人類の深層心理にはたらきかけ、世界を支配する事も可能だ」


「・・・大変ですね」


そんなもん作るな。


「ところで、システムを乗っ取られた、というのはどういう状況ですか?」


「うむ。ファンド君達が華々しい活躍をした結果、イベントマップが崩壊したじゃろう?あの対策を各地でやっておっての」


「はい、それは聞いています」


「うむ・・・それでじゃな。各地にシステムアクセス用の端末を設置して作業しておったのじゃが・・・」


老人は一旦、言葉を区切る。

そして、続ける。


「出しっぱなしにしておった端末をいつの間にか奪われておったのじゃ」


「ちゃんと管理しとけや」


おっと、思わず本音が。


老人は驚いた様に眉を跳ね上げると、


「おや、今美しさに欠ける言葉が聞こえたような気がするのじゃが・・・ふむ、人間界に洪水をおこしたくなってきたのう?」


「空耳かと存じます、神様。システムの奪還、お任せ下さい」


クソジジイにうやうやしく頭を下げる俺。


「一応、パスワードはかかってたんですけどね・・・相手が一枚上手でした。IDとパスワード、最大100文字設定可能な」


レインが残念そうに言う。

そうなのか。


「わふ・・・ちなみに、どんなパスワードだったの・・・?」


レインがにやり、と笑うと、


「IDが、『root』、そして、パスワードも『root』です。このシステムの根幹、根源、にかけているのです」

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