第57話 むねやけ

顔が赤くなるのを自覚し、冷静を装う・・・あ、レインが耳まで真っ赤。

自分が恥ずかしいならするなよ。


『・・・口から溢れたんです。貯めておける量じゃないんだから仕方がないでしょう。口に出さない内容はもっとたくさんあるんですからね』


『う・・・』


更にまだ追加してくる・・・だと・・・


「どうされたのですか、ファンドさんとレインさんは?」


エリスが不思議そうに尋ねる。


「わふー、胸焼けするので、何か甘い物と飲み物が欲しいのですぅー」


ダリオが人化した状態で、ふよふよ浮きながらエリスに言う。


「あら・・・可愛い。見ない顔だけど・・・ファンドさんの新しいユニットかしら?初めまして。私はエリスよ」


エリスが微笑む。


「わふー。私はダリオです。よろしくですー。」


ふよっ、とダリオがお辞儀する。


エリスがダリオにジュースとドーナツをあげている。


「クランのメンバー増えたんだな」


俺が言うと、


「はい、ファンドさんのお陰です。昨日もちらほら入団希望者来て・・・今日も面接予定です。頑張ってどんどん大きくします・・・よ!」


「頑張ってくれ。応援してるよ」


自分のクランではあるが、名前を貸しているだけだしな。

・・・さっきのリュックひょっとして、俺にクランマスター移す方向に誘導しようとしてたんじゃないだろうな。


「ファンドさん、今日は何か用事があるのですか?無ければ一緒に面接に参加して貰えないでしょうか?」


リュックが尋ねる。


「今日はレベル上げ予定なんだ。新しいユニットもいるしな」


「そうですか・・・残念です」


リュックが言う。


「私も、今日はレベル上げ、かな」


エリスが言うと、


「それは駄目」


全員の台詞がはもった。

お前クランマスターだろ。


「・・・ファンドさん・・・やっぱりエリスさんがマスターなのはちょっと・・・」


「・・・リュック・・・すまん、今のは俺もちょっと、と思った」


「・・・何で?!」


何で、じゃない。


「ただまあ、俺はエリス以上に何もしないからな。だから俺をマスターにはならないよ」


「・・・分かりました」


リュックが残念そうに言う。


「じゃあ、行ってくるよ」


そう言い、クランアジトを辞した。

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