第55話 ほどよいあまさ

「ううう・・・喋れます・・・」


ふよ・・・と浮き上がるダリオ。


「・・・ご主人様・・・素晴らしい鬼畜ぶりです」


レインが半眼で言う。


「ご主人様のアレ・・・耐えられる物ではないのでござる・・・昨晩もついついはしたなく声がでてしまったのでござるよ」


ユグドがうんうん、と頷く。


「あらあら、朝から元気ですね」


ライが言う。


待てお前等、俺は本を触ってただけだぞ?!


ぽふっ、とダリオが人化する。

純白の髪に、腰まで伸びる長髪。

深い深海を思わせる蒼い左目と、絶大な富を誇るような黄金色の右目。

成長の早い小学生、といった印象の背丈。

頭には四角い学者帽を被っており、それがまた可愛い。

顔は真っ赤で、涙目になっている。


「ダリオです、よろしく御願いします。・・・面倒なので、出来るだけ動きたくないけど、ご主人様に運んで貰うのは避けたいです」


抗議するように言う。

そもそも、面倒と言われても困るのだけど。

・・・真っ赤で涙目なのがまた可愛いなあ・・・もう少し触って・・・


「ご主人様?」


絶対零度の声が、レインから発せられる。

びくぅ、俺だけでなく、その場に居る全員が震える。


「よ、よろしくな、ダリオ!」


「ぽふー、よろしくです!」


「よろしくでござるよ」


「よろしくね~」


みんなダリオに挨拶。


「私はレイン、よろしくね、ダリオ」


「はい・・・よろしく御願いします」


ダリオがにこ、っと笑う。

やっぱり可愛いな・・・痛い、レイン、頬引っ張らないで。

「さて・・・デザートにケーキ焼いておいたんだけど、一人分足りないわね・・・」


ダリオの分だなあ。


「わふ・・・私の事は気にしないで下さい・・・」


食べるのも面倒なのだろうか。


「わふぅ・・・慰謝料として、ご主人様の分を、私が貰います」


えっ。


「そうね、仕方ないわね」


レインが頷く。

・・・動くのは面倒だけど、スイーツは食べるのか・・・


結局、レインのスイーツを半分分けて貰った。

・・・あーんとかしあって、可愛かった。


「ダリオ、気をつけないとああやっていちゃつかれるので、気をつけた方が良いですよ」


「わふー・・・ケーキは程良い甘さで美味しいのに、胸焼けするのですぅ・・・」


ライとダリオが何か話していた。


--


ぶぶっ


ケーキも食べ終わり、レインを堪能していると、端末に通知が入った。


「ん?何だろう?」


クランチャット、リュックからだ。


〈マスター、至急クランアジトに来て下さい。エリスさんの処刑方法に関して相談が有ります〉


・・・?!

何があった?!

絵文字も顔文字もない、シンプルな文字だけのそれは、しかし凄まじい威圧感を放っている。

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