第3話 死してなお、試練は俺に付きまとう。

「ほらほら!どうした?お前は死ぬために死んだのか?」

「な……何意味わからないこと言ってるんだよ……」

「違うだろ?逃げたかったんだろ??なら本気出せよ!」

先ほどから俺鈴音無月と童女……名前を聞いたところとうの昔に捨てたらしく、カルマと呼ぶように言っていた。

まぁ、そのカルマと俺はずっとやり合っていたいたのだが……結果は目に見えていた。

全勝全敗、全力で立ち向かってはいるのだが、出した手は粉々に砕かれていた。

「弱い……弱すぎるよ?ここは前世がきつかった奴ほど力を与えてくれる場所なんだぜ?なんで力を欲しない?なんで私を殺そうとしない!またあの場所に戻りたいのか!」

「なわけ……ないだろ……俺だってやれることなら腕をこんなことにしたお前を……殺してやりたい」

「ならやりな!今やれ!さぁ、さぁ!!やれよ!!」

「腕が動かない……んだよ……」

こいつは何が目的なのか俺をイラつかせて自分へと向かわせようとする……ほんとに何が目的なんだよ……。

だが、なぜだか知らないが、こいつのさっきから言っているような力を与えられるようなことは無いのだ……なんだよ、今まで死んでここに来たやつは与えられてるのに俺には与えられないとかここまで来て苛められるの?死んでまで苛められるとか最早才能だぞこれ。

「はぁ……しかたないね?腕さえ動けばいいんだね?」

「……少しはマシになるんじゃねえか?」

「ならあれだ!最後のチャンスを与えてあげるよ!」

「チャンス……?」

「……君の嫌いな人の名前を教えてよ」

何を言っているんだろうか?

復讐のチャンスでもくれるのだろうか?

「長谷部蘭子……」

「うんうん、想像どうりの答えだね!……ぶっちゃけ殺したいと思わない?」

「え?……まぁ、そりゃあ…殺したいとは思うけど」

「はぁ……はっきりしねえな?どうなんだよ?殺してぇのか殺したくねぇのか!どっちなんだよ!」

俺は苛められている間、誰かを殺してやりたいだとか、やり返してやろうなんて考えも起きなかった。

怖かったのだ、俺が何か行動に移すことで、もっときつい苛めになるのではと……逃げていたのだ。

だが、誰が俺を責められようか?一人でここまで頑張ってきた俺を責める権利なるものをだれが持っている?

答えは誰も……、人の抱えているものはその人しか解決することのできないナイーブな部分だ、触れても壊すことしかできないのなら、そっとしておいてほしいと思う……まぁ、俺の場合味方は本当に一人としていなかったから声かけてくれる人なんていなかったのだけども。

「殺したいとは思わない、もう関わりたくない、忘れていたい」

「……はぁ、それなら仕方ないよね?人は皆そういったものを持っている……」

「カルマ?」

「だけどね?面白くないから却下❤」

「え?」

何を言っているんだ……?

人の意思を無視……えっえ?

「なら、何のために聞いたんだよ……」

「いいじゃんいいじゃん!気にしなさんなっ!」

「気にしなさんなって……気になるだろふつう………」

そんな風に言っているとカルマは何やら水晶のようなものを取り出した。

「よいしょっと……」

「それは?」

「死宝玉って言ってね、死んだ人に関わっている人の情報を全て余す事無く見ることが出来る道具よ」

「いやな道具だな」

「陰湿と言っておくれ!もしくは根暗の仕返し道具と!」

「意味が変わってないんですがねぇ……で?それで何するんだ?」

「君態度でかくなったね?まぁいいけど!」

カルマはそれを何に使うと言う説明をするでもなく、俺の方へとづかづかと歩み寄ると俺の手を取り、死宝玉の上へと乗せた。

その刹那、死宝玉は青白い光と共に空中にインターネットでよく見るようなウィンドウを表示した。

「これは……クラスの連中と、家族……」

「そう、君が自殺する原因になった人たちだよ」

「ふぅん……」

「あれ?意外と冷静ね?今までの人たちは発狂してキレてたのに」

「言ったろ、関わりたくないって、今更生きてた時のやつに何の感情もねえよ」

くどいようだが、何度でも言っておこう、俺は俺を自殺に追い込んだ奴に対して何の感情も抱いていない。

死んだのは自分で、死を選んだのも俺だ、他の誰でもない俺が選んだものであるのなら誰かを恨むなんて自分勝手もいいところだろう。

「まぁ、いいさ、どう思うかを私が言っていい事ではないだろうし」

「あぁ」

「それはそうと、君これ見てて思うこととかない?」

「思うこと?……ウィンドウごとに色が違う?」

「おおー流石の観察眼だね!そうそう、そこに気づいてほしかったんだよ!」

俺がそこを指摘した理由は二つあった。

一つは、色がどれも違うという単純な理由だった。それが気になったから述べただけ。

二つ目は、これはどういう種類で分けられてるのかという疑問があったからだ。家族とそれ以外で分けられているのかもと考えたりもしたのだが、それも違うのだ。

なんせ妹や兄貴もクラスのやつらと一緒に分類されているため気になったのだ。

「これどう分けられてると思う?」

「わからん、これを指摘する前に一通り考えたけどわからん」

「ほほう、あの短時間で………」

「ん?」

「いえいえ、ますます私の求めていた人材に適していると思っただけですよ」

「求めていた?……もしかしてさっきまでのあの手合わせは俺を見極めるために?」

「よく感づく人ですね?ますます合格です」

意味は解らなかったが、とりあえず俺は何かに合格したらしい。

「なぁ、さっきから言ってることが一つも理解できないんだが?」

「準備ができ次第教えてあげよう!」

つまりは準備らしい準備を何一つしていないということらしい。

そう言った後でカルマはテキパキと行動し準備らしいことをこなしている……と思う。

「ふふふ~ん……あ、ねえねえ?そこに置いてあるそれとってよ!それ!……そこじゃなくて…そう!それ!!」

「近いんだから自分で取れよな?」

「女性からのお願いにその答え方はないんじゃないかな?」

どこに女性がいるって?とかって冗談を言う場面ではなさそうだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る