第137話 仕掛けは発覚した

 カレーをいただいた後。

 会長はまたどこからともなく1リットルの紙パックを取り出す。

 業務用スーパーで売っている安い野菜ドリンク1リットル入りだ。


「これは秋良専用なのです。魔力補充用で、食事後1回コップ1杯服用なのです」

 そう言ってコップを取り出し、8分目程注ぐ。


「大体これくらいの量が目安なのです。という事で、皿などは片付けてキッチンの所においておいて下さいなのです。夕食を持ってくると同時に引き上げるのです。

 では、またなのです」


 そう言って会長は消える。

 残されたのはカレーを食べ終わった皿等と、野菜ジュース入りのコップ。


「しかし、楓に会えないんじゃ何しに此処へ来たかわからないな」

 栗平がそんな事を言う。


 栗平が言いたい事はわかる。

 あえて楓さんの名前を使って自分の事として言っている。

 でも多分本当は春日野と杏さんの事を言っているのだ。


「さあ、先生方が帰った夜に会わせてくれるんじゃないかな」

 僕にはそれ位しか考えられない。

 でもそれなら、夜にこっそり僕達を連れてきた方がいいような気がする。

 色々とわからない事が多い。

 強いて言えば。春日野を発作を起こさないよう監視下に置きたい位だろうか。


「すまない。何かよくわからない事態に巻き込んで」


「いいのいいの。俺は楓さんに会えるチャンスが少しでもあればそれで充分」

「僕もどうせ暇だったしさ」


「悪いな、本当に。さて、取り敢えず片付けるか」

 そう言って春日野は立ち上がり、コップ入り野菜ジュースを一気に飲み干して。


「ん、うっ……」

 顔をしかめて、そしてふらっと倒れる。


「大丈夫か?」

 何が起こったんだろう。


「ああ大丈夫。ちょっと待ってくれ」

 倒れる前に何とか手をついているから怪我はない。

 でも……


「大丈夫、ちょっと最初の情報量が多かっただけだ。理解した。会長の思惑は」

 そう言って春日野は立ち上がる。


「取り敢えず片付けて、それから話をしよう」


 ◇◇◇


 食器類を片付けて、ミニキッチンで洗ってまとめて置いて。

 座卓の所に座り直す。


「さっきの野菜ジュース、何か入っていたのか」


「ああ」

 春日野は頷く。


「魔力だけじゃない。いくつか魔法が仕込んであった。現状認識魔法、知識魔法、心理魔法、それに予知か。杏さんの今の状況、表層思考、今までの歴史、深層で普段は表に出ない思考、記憶、未来予知まで」


「全部が杏さん限定か」


「ああ」

 春日野は頷く。


「それも1人の魔法じゃない。雰囲気でわかる。何人もの魔法をつかってこの効果を出している」


「その通りさ」

 聞き覚えのある声がした。


「楓か」

「ああ」

 楓さんが現れる。


「悪いな颯人、なかなか顔を出せなくて」


「でもずっとここを監視していたんだろ。ずっと気配がしていた」


「ばれたか」

 楓さんはちょっとにやり。

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