第136話 やっと全員目覚めたけれど

 5分くらい経っただろうか。

 栗平がふらっと起き上がる。

 回りを見回して。

「あれ、此処は何処だ」


「保養所の2階、元従業員用スペースだそうだ。しばらくはこの部屋で大人しくしておいてくれと伝言があった。トイレと洗面所、キッチンはそれぞれドアを開けたところにある。一般の生徒対策にシールドをこの部屋に張っている関係で動き回らないでくれという話だ」


「何だ。楓に会いに行けないのか」

 栗平はちょっとだけ不満そう。


「仕方ない。ゲームでもやっているか。あと会長はどうしたんだ」

「合宿に戻った」

 あえて楓さんのことは触れないでおく。


「どっちにしろ待ちか。まあ肝心の春日野がまだ目覚めてないんじゃしょうがない」

 確かに。


 そんな訳で。

 俺は仕方なく持ってきた本を開く。

 取り敢えず時間つぶしだ。

 でもあまり中身が頭に入らない。

 なのでパソコンに切り替え。

 ノートパソコンを開いてしばらくネットサーフィンをしていると。


「うーん」

 やっと春日野が起き出した。

 そんな訳でもう一回状況を説明。


「そうか、悪いな。2人とも巻き込んで」


「俺は楓といちゃいちゃしに来ただけだぜ」

 栗平がさらっとそう返す。


「確かに栗平はそうだろうな」

「まずは皆が寝静まってからだな、夜這いは日本の文化!」

 おいおい。


「見つかったら酷い目に遭いそうだな」

「それが怖くて夜這いが出来るか」


「その通りなのです。性の文化は困難を乗り越える程美味しいのです」

 出たな。


「まずは何とか無事到着なのです。ただ対魔法使い用に空間障壁を張ってあったのです。おかげで私もちょっと復帰に時間がかかったのです。

 そんな訳で一番魔力に侵されていない正樹が最初に目覚め、次に颯人、そして秋良の順になったのです」


 なるほど。

 俺が最初に目覚めたのはそういう訳か。

 でも、それなら。


「会長は大丈夫なのか」

「私は頑丈なので何とかなるのです。ちょっと魔力切れ気味だったのですが、それも補充したのです。

 さて、一服という事で軽く軽食をどうぞなのです。特に秋良は朝から何も食べていないと思うのです」


 そう言って会長はどこからともなく座卓を取り出した。

 流石に重そうでふらっとしたので咄嗟に支える。


「ありがとうなのです。それでは座布団はないけれど適当に座ってくれなのです」

 僕、栗平、春日野と座ったところで。


「それではちょいと厨房から失敬するのです」

 カレーライス、盛り付け済み、麦茶付きスプーン有りが乗ったお盆が4つ。

 それぞれ僕達の前に出てきた。

 ちなみに4つめは会長の前にある。


「それでは、いただきますなのです」

 何か知らないがまあそんな流れなので。

 僕達もカレーをいただくことにする。

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