第134話 長距離移動!
12時59分。
僕の部屋のインターホンが鳴った。
「はい」
返事をして、一応俺自身で開ける。
中に会長がいるから用心のためだ。
外にいたのは紛れもなく春日野だった。
だがしかし、何故か余分なおまけもついている。
栗平だ。
とりあえずささっと中に入れて。
そして尋ねる。
「何故に栗平、お前がここにいる」
「単に楓ちゃんに会いたいなーと思ったら、どうやら春日野に着いていけば会えそうな予感がしてさ。だからついてきた」
しっかりディパックを持っている辺り、出かける気満々の模様だ。
ちょっと予感がしたので栗平に聞いてみる。
「まさかと思うが、何か薬か道具で予知魔法使っていないよな」
「ぎくっ!」
栗平はわざとらしくそうリアクションした後。
「まあいいじゃないか。お互い他人事じゃないしさ」
更にわざとらしくそんな事を言う。
まあそれでも栗平なりに春日野の事を心配はしているのだろう。
それは僕にもわかるけれど。
いいのかな。
僕は会長の方を見る。
会長は頷いた。
「まあ、仕方ないのですよ」
そう言って、会長はどこからともなくロープを取り出す。
自分の腰部分にロープを巻いて縛って固定した後、ロープの端を僕に渡した。
「取り敢えずこのロープを、ズボンのベルト通しのところ5箇所以上に通して、次の人に渡すのです。全員が通してたら端を私に渡して欲しいのです。全員で輪をつくる感じになるのです」
「何の為に?」
「距離が長いのと妨害があるのとで、万が一の場合を防ぐためなのです。
いつになく用心深い。
いつもの気軽にふいっとその辺に移動するのと違う感じだ。
栗平から渡されたロープを会長はしっかり自分の元のロープに通して縛る。
「それでは各自、繋いだロープをしっかり持つのです。ロープそのものはしっかり舫い結びで縛ったのでそう簡単には解けないのです。ただいつもの移動と違ってそこそこ衝撃なり何なりあると思うので、覚悟はして欲しいのです。あと、目は瞑っていた方がいいのです」
そう言って会長はポケットから何か出して口の中に放り込む。
「では、行くのです」
そう言った瞬間。
いつもは軽く足が宙に浮かんだ感じがする。
でも今回は急速落下している感覚だ。
回りを確認したくても視界が全く認知不能。
というかこれは目を瞑っていた方がいいのだろう。
危険な感じがする。
「今は私を信じて欲しいのです」
会長の声だけが真っ当に聞こえる。
そして。
一瞬着地したかのような感覚があったと思ったらまた落下状態に。
「いくつかの地点を経由して跳ぶのです。通常次元以外の場所のジャンプポイントにしたので、目は瞑っていた方がいいのです。何か聞こえても無視するのです」
急に風に吹き飛ばされるような感覚や。
更に雨に叩き付けられるような感じも。
「全ての感覚は幻なのです。持っているロープを信じるのです」
そして。
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