第133話 僕の分も食べられました

「それで何のつもりで来たんですか」


 特製辛みそ麺を食べている会長に尋ねる。


「御存知の通り秋良の件なのです。判断する前に、杏の本当の気持ちとか、色々とわかって欲しかったのです。ついでに魔力に身体が適合しないとどうなるかの見本も、必要なら見て貰おうと思ったのです」


 うん、その動機はわかる。

 でも。


「なら何故春日野の部屋でなく、僕の部屋に出たんですか」


「副学園長の妨害があって、秋良のところにピンポイント出現するのが難しかったのです。でも正樹は色々とお馴染みなので、妨害の中でも目印にしやすかったのです」


 喜んでいいのか悪いのか。

 僕としては微妙なところだ。


「それでお願いなのです。正樹はGWの間、何か抜けられない用事か何かあるでしょうか?」

「特にないな」

 のんびり本を読んで過ごす予定だったし。


「ならお願いなのです。最大で6日まで付き合って欲しいのです。何なら本とかノートパソコン持込でいいのです。プラス2泊3日の着替え持込で、飯は3食何とか用意するのです」


 何を考えているのか大体わかるけれど、更に聞いてみる。


「理由は」

「秋良の付き添いなのです。秋良にはもっと色々な事を知って、気づいて、その上で今回の決断を下して欲しいのです。その時に同じ視点で相談出来る見張りを兼ねた相手が1人欲しいのです」


 うん、会長の意図は予想通りだった。

 でも。


「この行動は多分、会長の独断なんだろ。大丈夫か?」


 副学園長の妨害があったという事は、少なくとも副学院長は味方ではない。

 何かあった場合は会長自身が責任を問われる事になりかねない。


「実は他にも何人かに協力はして貰っているのです。でも、この件そのものは私の個人的な意志のもと、全責任私で構わないのです。これは私の美学というか、そうしたいという意志だけでやっている事なのです。他は全員私に巻き込まれた、それでいいのです」


 わかった。

 そして今更ながらに気づいた。

 目の前の女の子が、紛れもない僕らのの上級生で、そして会長と呼ばれるだけの存在であることに。

 見かけは小学生5年生だけれども。


「わかった。なら僕も参加させて貰おう、僕の意志で」


「なら、取り敢えずこの食事がおわったら秋良をここに呼んで欲しいのです。着替えと暇つぶし道具持参で」


「わかった」


「でもその前に」


 会長はちょっと難しい顔でそう告げる。

 何だろう。


「ラーメンおかわりなのです!」


 おい!

 ちょっと待て。

 残っているのは僕の分だ!


 ◇◇◇


 そんな訳で。

 SNSのメッセンジャーを通じて春日野に連絡。


『13時00分、2泊3日分の着替えと暇つぶし用具を持って僕の部屋へ来られたし。食事とWifiあり。詳細はその時』


 これで充分だろう。

 奴は僕以上に勘がいい。

 だから何となく気づく筈だ。

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