第132話 男子寮への侵入者
「呼んでおいて悪いな。ちょっと一人で考えさせてくれ」
そう春日野が言うので。
取り敢えず僕も部屋に戻って考える。
僕が考えても無駄なんだけれど。
それでも考えてしまう。
正しいのはきっと、魔法から離れる事だ。
ただ今の春日野にそれが出来るかどうか。
杏さんの話をどう受け止めるのか。
いくら考えても僕は春日野本人では無い。
だから答を出せるはずも無いし、出したところで意味など無いのに。
それでももし、同じような事を僕が言われたならば。
僕は何を大事にして、どっちを選ぶべきだろうか。
そんな事を考えていた時だ。
ふっと部屋内に何かを感じた。
違和感、それも知っている違和感だ。
そして次の瞬間。
「やっと着いたのですよー」
見覚えのある小さな姿が出現した。
言うまでも無い、会長だ。
「どうしたんですか。今は合宿中でしょう」
「魔法強化した上で移動を繰り返せば、合宿所から何とか来れるのですよ」
ただかなりお疲れの様子だ。
いつも程の元気は感じられない。
「秋良のことは聞いたのです。それで何とかしたいと思ってやってきたのです」
それで気づいた。
「副学園長と話している間に聞こえたのは、会長の声だった訳か」
「介入しようと思ったのですが、副学園長に邪魔されたのですよ」
会長はそう言って、そしてふらっと僕のベッドの上に倒れる。
「後でここに秋良を呼んで欲しいのですが、その前に休ませて欲しいのです。副学園長の妨害を突破してここまで飛んでくるのは、流石に疲れたのです。
という訳で、ちょっと失礼するのです」
もぞもぞと僕の布団に潜り込んで、そのまま寝入ってしまう。
合宿関係の色々とか大丈夫なのだろうか。
でも、逆に言うと。
それよりも重要だと思ったからこそ会長はここへやってきたのだろう。
結構な無理をしてまで。
そして流れからして、春日野の事に関連してなのは間違いない。
まあしょうがないか。
そんな訳でベッドを占拠されたまま、僕は絨毯の上に座って本を読む。
◇◇◇
腹が減ったのでそろそろ昼飯と思って冷蔵庫を見る。
一通り買い出しはしているので、物はそれなりに揃っている。
取り敢えずという事で、ラーメンを食べようかとモヤシと挽肉を炒めていたら。
「もう1人分プリーズなのです」
追加注文が入った。
会長が起きた様子だ。
仕方ないのでモヤシと挽肉を増量する。
「会長は辛いの大丈夫ですか」
「どんと来いなのです」
無事復活した模様だ。
なので炒めながら唐辛子その他も入れて。
ぴりっと辛口の味噌ラーメンなんてものを2人分作る。
麺は一応生麺を1人あたり2袋投入。
まあ業務用スーパーで売っている一袋税込み30円位のものだが。
茹でで曝してぬめりを取ってと。
食器は揃っていないので会長分と僕用の大きさが異なるが、まあしょうが無い。
因みに会長用が丼で、僕用が汁茶碗。
汁茶碗に入りきらない分はキッチンにある。
そんな訳で取り敢えずどうぞと丼と箸を会長に出す。
「うーん、腹が減ったところにこの香りは最高なのです。いただきますなのです」
会長はそう言って食べ始めた。
「うん、いけるのです。これはオリジナルなのですか」
「理彩さんが辛いの好きでよく作るんです。それで」
「なるほどなのです。美味しいのです」
なかなかの勢いで食べている。
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