第128話 関係者に連絡を
「麻薬じゃ無い。今のは多分、魔力切れだ」
魔力切れ?
そう言えば前に僕もゼリー2個食べた後になったな。
すぐ回復したけれど。
「でもそれが何故野菜ジュースで回復するんだ?」
「そこの野菜ジュースは魔力注入済みだ。例の機械で」
春日野は完全に回復したようだ。
よっこらしょと立ち上がり、ベッドに座り直す。
「普段の放課後は大体、杏さんの魔力を借りて魔法でものを作っている訳だ。それを毎日繰り返していたせいで、どうも魔力依存の体質になってしまったらしい。
一応杏さんがいない時でも魔法が使えるように、野菜ジュースのパック12個に魔力注入をして貰っておいたんだ。1個でだいたい1時間程度魔法が持つ程度に」
「それで魔力が切れるとああなる訳か」
「そうでもないんだ。普通は魔力きれでせいぜい眠くなるとかめまいがするといった程度。こんなに酷い状態は初めてだ。ただ力が無くなっていく感覚が何となくわかって、これは魔力切れだと感じたんだが何せ動けない。何とかベッドから出たけれど起きられない。だからスマホで音声入力して助けを呼んだ訳だ。悪かった」
状況はわかった。
何となくだけれども。
「土曜日からこっち、魔力を補給したり魔法を使ったりしたか」
「いや、この連休は久々にプログラムの方をやろうと思って使っていない」
なるほど。
でもいずれにせよ、だ。
「どっちにしろ放っておける症状じゃ無いだろ。杏さんには連絡したか?」
「まだ。でも合宿中だし、心配させるのも悪いかと」
その気持ちはわかるけれど。
「そういう状態じゃ無いだろう。ただの魔力切れとは様子が違うし。だいたいさっきの状態でトイレに行きたくなったらどうするんだ。寮に伝説を残してしまうだろ」
「今度はベッドに野菜ジュースを置いておくから」
いやそういう問題じゃ無い。
そんな訳でSNSメッセージで状況をがちがち打ち込む。
「いや合宿で何かやっていると悪いし」
そう言う春日野をガン無視で打ち込んで送信。
杏さんのIDは開発部出張の際に聞いている。
折り返しは早かった。
3分もしないうちに春日野の携帯が鳴る。
「はい。はいはい。はい。はい。はい……」
随分はいが多い電話だなと思いつつ聞く。
どうせ相手は杏さんだろう。
その様子を見ていたら、春日野がスマホを耳元から離した。
「電話替わってくれだと。杏さんだ」
という訳で電話を受け取って。
「はい柿生です」
「正樹か。済まなかった。感謝してもしきれない。まさかこんな事になるとは思わなかった。本当にありがとう」
杏さんの声だ。
でもいつもと比べると随分口数が多い気がする。
「それでお願いだ。そいつは健康に自信があるから無理するだろう。だから頼むからしっかり見張っていてくれ。可及的速やかに信頼出来る人間を手配するから。取り敢えず部屋から出さないでくれ。逃げたりしないよう気を付けてくれ。お礼は何でもする。頼む」
何か杏さん、やっぱりいつもと違う。
「大丈夫です。見張っていますから」
「頼むぞ。私も出来るだけすぐそっちに戻るから」
電話が切れる。
「ほい、電話は切れたぞ」
スマホを返してと。
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