第116話 理不尽な実力?

 翌朝。

 朝食の席は半分くらい空いていた。

 早朝近くまで続いたカードゲーム大会の影響だろう。

 朝食のメニューはそれを見越してか、和食系バイキング。

 好きなように取って好きなように食べてくれと言う事らしい。


「それにしても今回は散々だったわ。卓球は1回戦敗退だし、テニスも四季に負けるし、カードゲームは最下位グループが定位置になっているし」


「悪い」

 カードゲーム総合2位の理彩さんがぼそっと謝る。


「理彩は悪くないわよ。でも疑問なんだけれど、何で楓が5位なの。理彩と同等以上の魔法プラス未来予知をもっている筈なのに」


「未来予知は万能魔法じゃないさ。最悪の場合カードを配られた瞬間『あ、勝てない』と理解する程度で。ある程度以上の能力があればあとは運だ。そして運のステータスは僕より理彩の方が高いらしい」


「なら隣の席の万年カードゲーム首位は?」

 確かに運に関係ない人がいるな。


「明里さんは別。多分視力に運を引き寄せる魔法も込みで入っている」

「そんな魔法は持っていないな」

 明里さんは肩をすくめてみせる。


「確かに運も重要だけれどもそれ以上に作戦が重要。楓は人相手の経験がまだまだ足りない」


「そういうものですかね」

 楓さん、納得がいかない模様だ。


「そうそう、納得がいかないと言えば会長だ。戦闘を見て思ったんだけれど、会長は敵の魔法攻撃を一切避けていない。歩美さんは直前で打ち消して無効化していたけれど、会長は全部まともに受けている。それでも全くダメージを受けたように見えない。あれはいったい何なんだ」


 あ、その人の話題はしない方が……


「長年の鍛錬の成果なのです!」


 ああ遅かった。

 本人が降臨してしまった。


「それにしても、敵を撃退したのにだれも褒めてくれないのです。『共倒れになってくれればよかった』とまで言われているのです。『共倒れは駄目!いつか私が倒すから』とまで言われてしまったのです。皆酷いのです。ご褒美が欲しいのです」


 確かに。

 相手が弱かったとは言え色々防衛の準備をして、被害無しで護りきったのだ。

 少しは褒めてやってもいいような。


「まあ確かにそうですね。よくやってくれたと思います。でも褒美になるようなものは特にないですよね。合宿中だし基本皆さん貧乏暮らしだし」


「いや、ちゃんとあるのですよ」

 会長はそう言って、今度は僕の横に出現する。


「ちょっと秘密の相談なので、耳を貸して下さいなのです」

 どれどれ。

 僕が会長に耳を寄せようとした時。


「危ない正樹」

 未来さんの声とともに冷気が頬をかすめた。


「何ですか今の」


「会長をよく見ろ」

 理彩さんの言うとおり見てみる。

 口を伸ばしてぶちゅーっとキスをしようとした姿勢で凍りついて。


「不意打ちでキスをしようとした訳よ」


「その通りなのです」

 あ、あっさり復活した。


「頬を狙うか唇を狙うか、迷った処でやられてしまったのです。残念、次回こそは正樹の貞操を奪うのです。ではまたなのです」

 やめてくれ。

 そう言うまもなく会長は消える。


「何で、今の一応マイナス200度はかけた筈なのに。当たっているのに」

 未来さん、そんな危険な魔法を僕の真横で展開しないでくれ。


「あれが会長の実力なんだ。正直訳がわからない」

 その楓さんの言葉に。

 403号室、405号室全員がうんうんと頷いた。

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