第113話 応援は無用です

 そうだ。

 思い出した。

 何か襲撃があるという話になって。

 それで理彩さんに何か用事があるって誘われて気を失ったんだった。


「悪かった」

「いや、理彩さんはこっちの安全を考えてあえてああやったんだろ」


 そう言っている間も臨時ニュースは続く。


「臨時ニュースを続けます。今回の襲撃は評議会の一部守旧勢力の独断によるものと確認されました。目的は魔法及び魔道具研究の阻止と確認。第1ターゲットは杏さんと秋良さんとなっています。


 なお現状での防衛体制は、会長2人組が主力相手に阻止戦闘、遊撃部隊2人が秘匿部隊の確認捜査及び排除です。敵の為にも遊里さんに排除される敵がいないよう祈っていて下さい。なお藤沢先生の行動及び現在地は不明です。

 それでは敵主力部隊と歩美さんの戦闘をお送りします」


 画面が切り替わる。

 上下左右灰色の何も無い空間。

 そこに相手5人と会長、歩美さんがいるのが確認出来る。


「戦闘は会長が創出した別空間内で行われております。それでは戦況が変化するまで戦いの状況をご確認下さい。

 なお、途中まで確認すればおわかりになると思いますが、今回の部隊に応援は不要です。実力を確認したい方は最終日のエキシビションマッチで試して下さい」


 まず相手が仕掛けたのは心理攻撃。


「相手の先頭さんが仕掛けたのは心理攻撃。思考操作で相手の思考能力を落とす代物です。当たればアジャパーになりますが、2人とも影響は無い模様です」


 会長はつまらなそうな顔でガムをかんでいるし、歩美さんは何処からともなく取り出した団扇でパタパタやっている。

 緊張感のかけらもない。


「うーん、聡美や舞香の魔法の方がしんどいのです。この程度は避ける価値も無いのです」

「普通の人は会長みたいに攻撃受け慣れしていないんですよ」


 余裕というか何というか。


「さあ、次は炎のようです」


 2人とも変わらず。

 避けてすらいない。


「うーん、遊里の本気攻撃よりはぬるいのです」

「遊里さんの本気攻撃は危なすぎますからね。高温すぎて放射線振りまきますし」


 どういう高温だよ。

 思わず突っ込みたくなる。

 さて次だ。

 どこからともなく巨大な岩が出現して2人を飲み込む。

 岩がひび割れて中央部が割れて。

 中から変わらない2人が出てきた。


「ちょっとホコリっぽかったのですよ」

「微妙に被害が出てしまいましたね。洋服洗濯ダメージというところでしょうか」


 よくわかった。

 この2人、異常すぎる。

 何でただの生徒なのにこんなに強いんだ。

 しかも相手は魔法使いの最高機関が派遣した刺客なのに。


「説明致しますとね。今の魔法使いは実戦経験が少なすぎるんですわ。目立たないように隠れていて、まれに一般人相手に使うなんて使い方。それでは魔法戦闘は強くなれません」


 歩美さんの説明に会長が続ける。


「おかげで現在いまでは強い魔法使いは評議会をほぼ無視しているのですよ。時代遅れの守旧機関と言って。そしてその中でも守旧派の手下になるような魔法使いなんて、大した連中はいないのです。

 でもいい加減飽きたのです。ちょっと交代してくるです」


 会長の姿が消えた。

 そして3秒後。

 楓さんがいきなり出現する。

 楓さんは相手を見て、そしてため息をついた。


「他人事ながら同情するよ。会長と歩美さん2人相手だなんて。僕ならふて寝して戦闘拒否だな」


 楓さんの心からという感じのそんな台詞と色めき立つ敵集団。

 今度の相手には効くだろうか。

 そんな感じで攻撃が再開される。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る