第111話 明里さん対、舞香さん

「彩葉。そっちの専門だ」

 明里さんはそう彩葉さんに告げる。


「わかりました」


 彩葉さんは軽く目を閉じて。

「3時間の睡眠強制と、特定記憶の非言語化処理の魔法がかかっています。両方解きますか」


「睡眠強制の方だけ」

「わかりました」


 何故明里さんがそう指示したかは僕にはわからない。

 でも目視出来る環境の明里さんは知識の上では『全能』に近い。

 その魔法を僕は信じる。


 そして。

「うん、うーん……」

 未来さんはそう言って、寝返りを打って。

 そしてぱたっ、と動きを止めた。


「なかなか言い夢を見ていたんだけれどなあ。あ、え、何で皆」


「とりあえず食事の時間です。下へ行きましょう」


 未来さんは周りを見回して気づく。

「あれ、理彩は」


「その事を含め、です。もう事態は始まりかけているようです」


「明里」

 杏さんが何かを明里さんに渡す。

 よく見ると例の魔法杖だ。


「同じに見えるけれど試作品。出力3割増」

 そんなものまで作っていたのか。


「それでは食堂へ行きましょう」

 明里さんを先頭に食堂へ。


「未来さん、どう、気分は?」

「何とかってところ。それで正樹も理彩が?」

「多分。でも……」

 何か言おうとして上手く言えない僕の台詞を未来さんが遮る。


「大丈夫。理彩が正樹に害意を持つ事なんてあり得ないから」


「その通りですね」

 明里さんがさらっとそう認める。


「だから今急ぐべきは食堂なんです。舞香と、あと聡美さんと会長ですね」


 その3人が何なんだろう。

 階段を一気に降りて食堂へ。

 探すまでもない。

 入口で舞香さんが待っていた。


「お疲れ様です皆さん」


「舞香!」

 舞香さんは両手を開いてちょっと上に上げる。

「私は杖を持っていません。目を使える分、今は明里の方が強い筈です」


 明里さんは少し厳しい目で舞香さんを見て、そして頷いた。

「納得した。それで会長と聡美さんは」


「行動中は他に遊里さんと楓さんですね。理彩さんは食堂に戻っています」


「わかった。お疲れさま」

 明里さんはそう舞香さんに声をかけて、そして僕らの方を向く。


「申し訳無い。説明は少し後になる。納得出来ないかもしれないが」


「いえ、大丈夫です」

 僕はそう明里さんに声をかける。

 大丈夫、明里さんは信用していい人だ。

 根拠はないけれどそう感じる。


「正樹、それは過信というものだぞ」

 明里さんが苦笑。

 読まれたな。

 まあいいけれど。


「それでは夕食だ」

 という訳で。

 取り敢えず僕らは食堂へ。

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