第107話 嵐の予感
「惜しかった」
「でも結局はストレート負けだわ」
未来さん、がっくりとしている。
午後最初の卓球大会、残念ながら敗北だ。
何せ相手が悪かった。
前回のテニスの覇者、3年の真奈美先輩だ。
魔法ステータスの全てが未来さんより上。
それでも結構食らいついてはいたのだけれど。
「何せ速度もパワーも全部上で、加速まで使われると流石に無理ね」
という感じである。
「しょうがない、気分を変えてテニスに集中するか。相手は誰だっけ」
「四季だ」
その名前には聞き覚えがある。
「あの演習の時に小屋にいた人?」
理彩さんは頷いた。
「委員長か。うーんこれは負けられないな」
「四季の方が魔法は上だぞ」
「わかっている。厳密には魔法慣れの部分で私より上ね。発動のスムーズさとか」
「それがわかっているなら大丈夫だろう」
「気休めでもありがと」
なんて会話をして。
「そう言えば楓の第2回戦、どうだったんだろ」
という話になる。
そう言えば楓さん、2回戦も第1試合だったな。
ただ魔法放送は既にテニスの放送を終了している。
つまり第1試合は終了したという事だ。
「まあスコアボード見に行けばわかるでしょ」
と言う事で階段を上がり、玄関から外へ出たところで。
楓さんと栗平、それに歩美さんというよくわからない組み合わせに出会った。
楓さんと歩美さんがなにやら深刻そうな感じで話をしている。
「こんにちは。どうしたんですか」
未来さんが愛想良く挨拶。
楓さんがこっちを見た。
「いや、ちょっと嫌な空気があってさ。それで怖ーいお姉様にご相談」
「私達の気のせいならいいのでしょうけれどね」
どういう事だろう。
「魔法で何か感じたんですか」
「正確に言うと、感じないという方が正しいかな。視界に入って見えているはずの場所が曇っていて見えない感覚だ」
「他の時空間魔法持ちにも聞く必要があるかもしれませんね。会長とか」
歩美さんがそう言った時だ。
「呼んだですか」
唐突に本人が出てきた。
相変わらずの地獄耳というかなんというか……
そして。
「もし心配事があるとしても、食事を終了してカードゲーム大会に入るまでは大丈夫なのですよ。それでは用事があるので失礼するのです」
会長はそれだけ言って、そしてまた消える。
こっちが何もいう間も無い。
僕や理彩さんや栗平含め、全員で顔を見合わせる。
「会長、完全に何か気づいていますね」
歩美さん、ため息をついた。
「でも会長がそう言うなら。夕食終了まではきっと大丈夫なのでしょう」
「会長の言葉は信用していいのか?」
楓さんの言葉に歩美さんは頷く。
「あの人はあの人なりにこの集まりと皆さんが大好きですから。魔力も確かですしね。色々大変な人ではありますけれど」
大変な人か。
確かにそうだな。
毎回酷い目に遭っている僕は本心からそう思う。
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