第105話 二つ名『繊月』
「まあアレはアレ、それはそれ。昼食を作ろう」
という杏さんの言葉で調理体勢に入った。
「愛海、寸胴一杯にお湯。80度。未来と理彩で中丼50皿洗って並べて」
杏さんの指示ががんがん飛ぶ。
「今日のメニューはトマトサラダうどん。おかわり分含めて70食。内容はうどんに鶏肉卵キュウリレタスに缶詰ホールトマトのトマトと汁をかけ、ごまドレッシングかけて完成。」
指示の合間に今日の料理の完成形も知らされる。
「こういうメニューってどうやって決めているんですか」
「決めるのは合宿委員と私。買い物の時に安い物を見繕って、その場で」
「一気に3日分ですか」
「そう、3日分で今回は7食」
それも特殊技能なのではないだろうか。
それともこれも魔法のうちなのか。
「次、鶏肉冷凍を袋ごとお湯で解凍しつつそのまま調理。彩葉と愛海で。愛海は魔法で温度維持。明里と未来、理彩3人で卵焼きお願い。4パック分。仕上がりはこだわらなくていい。どうせバラす」
そんな感じに効率的かつばしばし動いて。
おおよそ40分後には完成品が並び始める。
昼食は昼の12時から午後1時まで。
ただ、特に揃って食べるという訳ではない。
それぞれ予定もあるので、空いている時に適当に食べるという感じだ。
出来たのを察知したのか、早くも食堂に生徒がやって来はじめた。
そして。
「メイン終了。あとは出足に応じてうどんを湯がいて作ればいい」
おかず等は全てささっと取って並べられるようになっている。
あとは流れ作業でいくらでも作れる状態だ。
「卓球大会出る人は今のうちに抽選」
と明里さんの言葉で未来さん、楓さん、愛海さんは食堂隅の抽選箱へ。
そして明里さん自身も抽選して、名前を書いて戻ってくる。
「明里さんも参加されるんですか」
「今回は舞香がお仕事。だから代役」
でも……
「舞香さんは前回の優勝者ですよね」
「私と舞香だと勝負はほぼ互角」
つまり明里さんも最強レベルという事か。
そして早くも一波乱が。
「やっちまった。しょっぱなっから大本命相手だ」
楓さんがそんな事を言って戻って来た。
「第1会場第4試合、明里さん相手になってしまいました。どうぞ宜しく」
楓さんはそう言って明里さんに軽く頭を下げる。
「了解。お互い頑張ろう」
「頑張りますけれど、ちょい相手が悪いですよ」
明里さん、そこでにやりと笑う。
「格上かもしれない相手は久しぶり。
「ほら、何気にバレているし」
楓さん、わざとらしく肩をすくめてみせる。
「
未来さんが尋ねる。
僕もわからない。
「楓の二つ名。規定以上の魔力持ちの場合は年齢に関係なく二つ名が付く。ちなみに繊月とは新月の次の月」
何故か答えたのは理彩さんだ。
「何だ、理彩も知っていたのか」
「楓、隠していなかった」
楓さんは苦笑している。
その二つ名がどれだけの意味があるかは僕にはわからない。
ただ新入生で授業にも出ない楓さん、その実態は明里さんより格上の可能性もある魔法使いだという事か。
うーん。
取り敢えず栗平。
そんなの相手にしていて大丈夫なのだろうか。
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