第102話 模擬試合の結果と講評

「理彩は隠形重視、桃花は移動重視か。互いの持ち魔法を見ると順当かな」

 四季さんがそんな事を言う。


「どういう事ですか」


「理彩の持ち魔法は心理系、桃花は申告によると知識系。フィールド内にいれば距離や遮蔽物関係なく攻撃が通るタイプ。この場合だと相手の位置を早く正確に知ることが重要になるわ。


 桃花の魔法は知識。だから隠形魔法を使っても周りに移動の痕跡が残っていればそれを手がかりにされてしまう。だから理彩は極力痕跡を残さないように移動。


 そして理彩の魔法は心理。だから初期位置近くに居ればふとした心の動きで見つかる可能性がある。だから桃花は多少痕跡が残るの承知で大幅に移動した」


「お互い自分の隠形魔法が相手に通じているかどうか、それもわからないんでしょ」

 もう1人の女の子が話に加わってきた。


「ええ勿論。どちらも相手の位置を確認するのに長けた魔法持ちだからね。隠形魔法が通じていると思うか、通じていないと思うか。それも作戦のうち、

 通じていないと思えば速攻で攻撃をかけるし、通じているならあえて相手を動かして位置把握を確実にするのも手だし」


『移動終了まで残り10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、攻撃開始』

『終了。理彩選手のカウンター攻撃が有効判定。勝敗決定。なお双方ともに続行意志あり。移動時間60秒の後に第2回戦闘を開始します』


 あっさり終了した後、そのまま移動の再開になった。


「時間が余っていてお互いにその意志があれば2回まで戦闘を体験出来るのよ。今回は模擬だからね」

 未来さんが説明してくれる。


「なお今のはどっちも隠形魔法が有効だったようね。少なくとも理彩の隠形魔法は効いていた感じ。桃花が初期位置に対して捜索兼ねた攻撃を出したが失敗。その魔法で位置を確認した理彩がカウンター攻撃を仕掛けた形ね」


 なるほど。

 魔女の皆さんは色々わかっていらっしゃるようだ。

 僕は中継されている双方の位置と宣告された結果しかわからないのだけれど。


『3、2、1、攻撃開始』


 今度はすぐには試合は動かなかった。

 お互い相手を探っている感じだ。

 でも。


『理彩選手の勝利。模擬試合終了』

 10秒程してそんな宣告が下された。


「今のは」

「先に理彩が探知に成功した訳ね。魔力は差が無い感じだったけれどな」

「魔力と言うより度胸かな、今回のは。隠形魔法が通じているという自信」


「でも2回目のは?」

「1回目の教訓でまず隠れる事に専念した桃花と、隠形魔法の効果ぎりぎりの処で索敵を続けた理彩の差かな。あと桃花は移動痕跡残しすぎ。あと2度目再開の場所が良くなかった。地形上隠れながら移動出来る場所が限られていたってところかな」


 何か小屋内部の全員で今の試合の結果検討をしている。

 おかげで何もわからない僕でも何となく状況が理解出来た。

 つまりは色々と理彩さんの作戦勝ちという訳か。


「何か知識系のバトルってハイレベルよね」

 未来さんがそんな事を言って嘆く。


「こっちはいかに視界に敵を入れて攻撃をぶちかますかだけなのに」


「私もそうだね。とにかく見えないと話にならない」


「移動時間に一気に敵に近づくしか無いよな。あとは全体を見晴らせる2箇所の高台に陣取るか」

 なんて色々話を聞いていると。


 理彩さんが戻って来た。

 全身草まみれで、しかも大分疲れた感じだ。


「お疲れ」

「確かに疲れた。部屋に戻ろう」


 そんな訳で、僕ら3人は坂を下って保養所へ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る