第101話 模擬試合開始直前
「理彩さんの応援ですか」
「はい」
そう肯定してから気づく。
「審判もしているのに会話は大丈夫なんですか」
舞香さんは頷く。
「ええ。審判だけですから大丈夫です」
「私は解説会話あわせて5チャンネルまでですね」
聡美さんがそんな事を言う。
「凄い……」
横で未来さんが絶句しているけれど。
「心理系や知識系の魔法使いは何件同時処理出来るかというのも技術です。例えば明里も1度直接見てロックオンすれば10チャンネル以上を追跡出来ます。理彩さんも3チャンネルまでは使える筈です」
「まあ戦闘とかこんな場合でも無い限り、使わない技能ですね」
「ただ技術は技術として磨いておく必要がある訳です。ですからこの機会を使ってブラッシュアップしておこうと思っています」
「そういう訳です。授業や普通の演習では多人数相手はしませんしね」
何気にとんでもない技能持ちだ。
そんな同時処理ってどういう精神構造なのだろう。
「さて、観戦ならこの小屋にどうぞ。今回は心理系対知識系なので、情報が漏れないよう中継はこの小屋内だけで行っています。クーラーも効いていますしフリードリンクもいくつかありますから」
そんな訳で小屋にお邪魔する。
3人程パイプ椅子に座ってそれぞれの姿勢で寛いでいた。
基本的にはここは模擬演習の待機室らしい。
模擬演習の相手と予定時間等が書いた紙が貼ってある。
「未来、まだ予定先だよね。理彩の応援?」
知らない女の子が未来さんに話しかけてきた。
様子からどうやらクラスメイトのようだ。
「そ、私は予定、夕方だしね」
「それで横は噂の普通科の彼氏?」
「じゃないじゃない、理彩と共通の飯友」
という訳で僕も挨拶をする。
「初めまして。普通科の柿生正樹と言います」
「私は1Mの
そう言った後彼女はにやりと笑う。
「普通に自己紹介したという事は、正樹君は例のペーパーは知らないみたいね」
「あ、四季、それ駄目」
そう言う未来さんをさっと左手で物理的に抑えて僕に紙を1枚渡す。
「今回の合宿前に1年M組に出回っていたパンフ号外よ」
僕はその紙を受け取る。
「もう、何でそんなものこんな処まで持ってくるのよ」
「偶然ポケットに入っていただけだって」
どんな内容だろう。
僕はその紙を開いて確認しようとした時だ。
『さて、模擬試合10時10分の回、中継を開始します』
映像が脳内に飛び込んできた。
取り敢えずはこっちに専念することにしよう。
僕は手先の感触で紙を元に折り直してポケットへ。
『現在、10時から10分間の初期移動を行っています。
桃花選手は隠形魔法と筋力増強魔法を展開して高速でフィールド内を移動中です。
一方、理彩選手も隠形魔法を展開していますが、移動はごくゆっくり。
なおお互いに対して隠形魔法の効果があるかどうかは不明です。魔法そのものの能力の他、移動方法、移動場所等様々な影響により相手の受動魔法に感知されるかどうかが変わってきます。
移動は残りあと1分。移動時間のカウントダウン0と同時に攻撃開始となります』
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