第100話 次は理彩さんの模擬試合

 テニスコート付近はそこそこ観戦場所が残っていた。

 まだ1年同士の対決だし、その気になれば何処でも脳内実況で見る事が出来る。

 そんな訳で中央のネットの真横という特等席に陣取る事に成功。

 声を出しての応援は恥ずかしいけれど拍手くらいなら。

 そんなつもりで試合を見る。


 まずは相手のサーブから。

 豪快なジャンプサーブ。

 だが狙いは外れ、手前側のサービスコートでバウンドした。

 未来さんは途中まで動いたがラケットは出さない。

 途中で気づいたようだ。


 そして相手のセカンドサーブ。

 今度はゆっくり丁寧に打ってきた。

 未来さんは相手の反対側に打ち返す。

 相手が早送りのような速度で動き、打ち返す。

 未来さんは今度はネット際で横に流す感じで打ち返す。

 うん、これは未来さんの方が上手いな。


 なおどちらも動きが普通の動きと比べて速い。

 多分筋力増強とかの魔法を使っているのだろう。

 ただ未来さんはまだ余裕の無い動きはしていない。

 まだまだ大丈夫だぞという感じ。


 そんな感じで。

 1回だけ相手の高速サーブが決まったけれど、最初のゲームを取った。

 そして未来さんのサーブが上手い。

 一見、普通にボールを上げ、そのまま上から打っているだけに見える。

 でも球はそこそこ速いし、何より曲がる。

 相手の予想よりさらに1歩先に曲がるという感じ。


 立て続けにサーブを決めてこのゲームも取ってコートチェンジ。

 その後も危なげなくストレートで4ゲーム先取した。 

 未来さんは礼をしてコート外に出て、次の選手や他の1年と話をしている。


 よし、それじゃ今度は山側へと行くとするか。

 演習場は広すぎるし近くに行く意味はあまりないかもしれないけれど。

 でも応援だから一応出来るだけ近くには行った方がいいだろうし。

 そう思って山の方へ向かい始めたら。


「理彩の応援に行くんでしょ」

 未来さんがいつの間にか横に来ていた。


「あれ、さっきの友達とかは」


「挨拶してきたから大丈夫」

 早い。


「あと応援ありがと」


「見ていただけだけれどね。でも圧勝だったじゃ無いか」


「私は前回のテニス大会を見ているから。レベルも知っているし対策もしている」


「でもカーブボールとか、何か色々テクニックを使っていたけれど」


「どんな魔法使いでもね。基礎的ないくつかの魔法は特性に関係なく大抵使えるのよ。身体制御の魔法もそのひとつ。だから今回に備えてテニスの理論を色々読んでおいたの。イメージが掴めていればその通りに動けるから」


 そんな事が出来るのか。


「魔法使いって色々器用なんだな」


「その分知識とか作戦とか知的分野が色々必要なんだけれどね」


 そんな話をしながら狭いコンクリ舗装の道をのぼる。

 結構急だ。

 よいしょよいしょと10分程度のぼっただろうか。


 ちょっと開けた場所に出た。

 小さなログハウスと広いウッドデッキ。

 そこにデッキチェアと日傘、テーブルが2人分準備されている。

 テーブルの上にはドリンクとおやつまで用意されている周到ぶりだ。


 そしてリゾート宜しく伸びているのは舞香さんと聡美さんだった。

 こんな処から試合の実況や審判をしていた訳か。

 新型の魔法杖をそれぞれ2本ずつ手元に持っているのが見える。

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