第99話 魔法研究の今後

 理彩さんは模擬戦の為山方向へ。

 未来さんはテニスの試合が次になったのでテニス場へ。


 相手がいなくなった僕はホールで春日野とだべっていた。

 春日野も説明が一段落した模様だったし。


「それにしても随分色々な部品を開発したな。ほとんど電子回路状態じゃないか」


「電気や光とある程度類似性がある事がわかったからな。大体はその辺から理論を借りてきて、あとは実験だ。それでもNAND回路までは作れるようになったから、本気になれば魔力コンピュータだって作れる。ただ光回路より遅いから演算に使うのは賢い使い方では無いけれどな」


 所々わからない単語があるが、まあいい。

 ニュアンスは充分わかるから。


「それにしても春日野の加入でここまで進むならさ。何故大学部とか他ではこの手の研究をしていなかったんだろう」


 春日野は頷く。


「それは僕も疑問に思って色々聞いてみた。


 まず理由としては、魔法そのものを研究する部署が何処にも無い事だそうだ。大学部には魔法を使って何かをする研究は盛んだが、魔法そのものを研究する部署が無いらしい。


 そもそも魔法そのものの研究を禁止する協定が昔はあったそうだ。評議会とバチカンあたりの密約で。今は当然無効化しているそうだけれど。それでも古い世代の魔女の間では魔法そのものを研究することはタブー視されていたらしい。


 あとは単純に金の問題だそうだ。魔法を使っているとおおっぴらに出来ないからな。だから魔法だけの研究なんてスポンサーに説明出来ないしその為お金も取れない。結果研究室も作れない訳だ。

 ただ、これからは一気に変わるかもしれない。そう副学園長が言っていたな」


 春日野の言葉にちょっとひっかかった。


「あの発表会の後も副学園長に会ったのか」


 春日野は頷く。


「あの後も2回程4階の部室にやってきた。副学園長が言うには、この魔法薬作成機がひとつのきっかけになるそうだ。今までは魔法による一次製品しか無かったが、この魔法薬作成機で出来た薬は、魔法を利用した機械を使用して作った二次製品に当たるそうだ。つまりその間に入る魔法機械を研究する必要が出てくるという事らしい」


 話がややこしくなってきた。

 でも何となくわかるから良しとしよう。


「つまり大学部でもそのうち魔法を研究する部署が出来ると」


「大学独自の予算も大分増えてきたし、そろそろ作ってもいい頃だと副学園長は言っていた。ただ評議会とまた喧嘩だと言っていたけれどさ」


「その評議会っていったい何なんだ。前にも聞いたような気がするけれど」


「遙か昔に人間と魔法使いが共生出来るように作られた魔法使いの統率組織。魔女狩りの時代以来の代物だそうだ。副学園長もそのお偉いさんの1人らしい。ただあくまでバチカンとの協約で作られた組織だから、日本のようなキリスト教社会外の世界は担当外という話もあるらしいけれどさ」


 どうもその辺の色々な話を春日野は聞いているらしい。

 誰からだろう。

 副学園長じきじきか、それとも千歳さんとか杏さんからか。

 まあそんな感じで春日野と話していたところで。


 まもなくテニスの第4試合が終わりそうだというアナウンスが入った。

 第5試合は未来さんの試合だ。


「ちょっとテニス、知り合いの試合だから応援に行ってくる」


「お疲れ」

 ロビーに春日野を残してテニスコート方向へ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る