第97話 ハイパーテニス第1試合
ここの大会は表彰式はあるけれど、開会式や閉会式のような儀式は無い。
だから午前8時ちょうどの開始直後、いきなり第1試合になる。
楓さんも相手の実さんもテニスらしいポロシャツにスカート姿。
ただ楓さん、あのナイフホルダーとナイフは装着したままのようだ。
動くたびに一番長いナイフのシース先端が見えている。
双方普通に礼をするが、審判はいない。
だが。
「第一試合、開始です。放送及び審判告知は私、祖師谷聡美、審判は演習の方も含めて玉川舞香が兼任しております。なお私も演習の方の告知担当を兼ねていますので、双方の状況が交錯した場合は中継が一時途切れる可能性があります。あらかじめご承知下さい」
「審判も広報担当も兼任か」
「2人ともこの程度の距離なら関係ないタイプ。問題無い」
「でも魔力をかなり使うよね」
「あの魔法杖を使って力をセーブしている。コントロール技術が上手くないと無理だがあれならかなり魔力の消費を抑えられる」
「理彩なんでそれがわかるの」
「表層心理と魔力分析は私の得意技」
以前は思考を読むことを隠していた理彩さん。
でもいまはもう隠していない模様だ。
さて。
実さんが最初のサーブ権を取った模様。
構えて、打つ。
なかなかきれいなフォームだ。
元々ある程度はテニスをやっていた感じ。
それに対して楓さんもすすっと動いて慣れた感じでボールを返す。
ただ返すコースがかなり意地悪だ。
サーブの位置と真反対、それもそこそこ速い球。
だがここで実さんが異常な早さで球に追いつく。
そして更に速い球で打ち返した。
「実選手、加速を使った。これは数が少ない時空間操作魔法の一種です!」
だが。
偶然のようにその球筋に楓さんが構えていた。
そこで振ったラケットに球が当たりに行く感じで。
球は実さんの反対側へ飛び、コートを弾む。
今度は実さんも追いつけない。
「加速を使うとその分余分な慣性がかかる。だから次に対応出来ない」
理彩さんの解説。
「そうか、加速魔法はフィニッシュ以外だと逆効果なのね」
「まあ今は使わざるを得なかった。やむを得ない」
2人でそんな分析をしている。
「さて、楓選手はまだアクティブな魔法は一切使っていません。これは実力とみるか運とみるか。実選手の次のサーブです」
そう解説があって。
実さん。今度はボールを高く上げ、ジャンプして打つ。
かなり速いサーブだ。
だが楓さんはなんとかおいついたという感じでラケットを前に差し出す。
勢いを失った球がネットぎりぎりに返る。
実さんは何とか拾い上げるがボールが高く上がる。
「上手いな、実も。あれならネット際から返されない」
高い球はぎりぎりでコート内へ。
ただその分遅く、楓さんは余裕で間に合った。
待っていましたとばかりにラケットを強振。
高速で球が実さんの反対側に突き刺さった。
「楓、えげつない」
「どういう事」
「読みだけで勝つつもり。強いて言えばプラスして微弱な身体操作」
「どうやら楓選手はパッシブ系魔法と身体コントロールだけで戦うつもりのようです。ただしそれは身体強化等の魔法が使えないという事ではありません。そこに留意して下さい」
理彩さんが言ったのと同じ内容の解説が入る。
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