第95話 使えない春日野制作護身兵器

 朝食はハムエッグ、野菜サラダ、みそ汁に御飯だった。

 いかにも朝食という感じでなかなか宜しい。


「大会とか何も無ければ午前11時集合」


 隣のテーブルの杏さんから連絡が回ってきた。

 昼食当番の件だ。


「1時間で大丈夫ですか」


「今日のメニューは簡単。問題無い」

 だそうだ。


「ところでそっちの予定は」


 春日野に聞いてみる。


「これから2階ロビーで準備だな。杖と魔法薬作成機を置いて、説明札を置く。2日間設営しておいて、杖も20本くらい貸出可能にしておく予定だ。機械の原理説明と仕様説明を置いておいて、あとは放置。実際に使って貰った方がよくわかるだろう」


 なるほど。

 あとちょっと気になった事を聞いてみる。


「風呂場に不審者が来なかったか」


「来ると聞いていたので撃退用自動水圧銃を用意しておいた。僕以外には反応するようフルオート設定でな。3回程発射したようだがその後は無事だった」


 何という用意周到な奴だ。


「頼む、今日それを貸してくれ」


「すまん、僕の体型と体温等の設定入りでな。他の人には容赦無く放水を浴びせる仕様なんだ」


「つまり春日野以外には使えないと」


「まあ冗談で作ったのだけれどな。本当に使うとは思わなかった」


 くそう。

 用意周到かつ使えない奴め。


「参考までにどんなメカで対人判定しているんだ」


「赤外線カメラ2つと通常のカメラ2つ。判定方法は裏をかかれると困るから言えない。一応ラズベリーパイ2台使ってその辺の制御をしている。2台使うのはファイルセーフ用だ。1台が壊されたらその時点で敵対象に最高水圧の攻撃を仕掛ける」


 ラズベリーパイとはパソコン並みの性能を持つマイコンボードだ。

 その分値段も結構お高く、1台5千円くらいしたような記憶がある。


「随分高価なマイコン使っているんだな」


「今まで作ったマシンからの使い回しだ。そこまで小遣いに余裕がある訳じゃ無い」


 なるほど。


「ところでそういう話になるという事は、やはり色々あった訳だな、今回も」


「あまり聞かないでくれ。栗平の方は本望らしいけれどな」


 その言葉で春日野は察したらしい。


「まあお疲れとしか言い様が無いな。ところで栗平と相手の方は」


「なかなかラブラブだぞ。栗平にバイク免許を取らせて、2人乗りでラブホへ行くのが当座の目的だそうだ」


「なんだそれ」


 流石の春日野も一瞬呆れたが。

 それでも気を取り直して。 


「ラブホはともかく免許を取るのはいいな。教習所通うなら一緒に通ってもいい」


 確かに免許取ってバイクに乗るのも楽しそうだな。


「さてと。こっちはそろそろ行く。展示をしないとな」


「お疲れ」


 取り敢えず春日野達が出ていくのを見送る。

 そしてうちの部屋の方はと。


「そう言えば未来はもうテニス、エントリーしたのか」


「勿論、昨日のうちにエントリーしたわ。楓さんもね」


「私も模擬戦の10時10分の回を予約した。相手は不明だが1年の誰かだ」


 なるほど。

 なら僕はその辺をふらふら見ておこうかな。

 春日野や杏さんの展示もあるし。

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