第91話 部屋会、そして……
スマホで動画サイトをカラオケ代わりにして歌うだけではない。
魔法で怪しい光や音響の効果をつけたり。
挙げ句の果てには脱ぎだした人も出たり。
そんな色々怪しいノリの宴会になりはじめたので。
だいたい1時間で宴会から抜け出し部屋に戻ってきた。
「前の合宿もこんな感じだったのか」
「ここまで酷くは無かったな。まあこの前は人数が半分だったし、初回だったしさ」
栗平にそう答える。
流石にストリップショーは何だかなと思う。
どういう世界だよここは。
そんな訳で。
一応食べ物や飲み物はキープ可。
だから部屋分を持ってきて部屋会に移行する。
そして今は楓さんによる、栗平と付き合った理由のクライマックス部分。
「久々に買い出しに出たら荷物が重くてさ。どうしようかなと思っていると、後から『彼女欲しい彼女欲しい』という声が聞こえてきた訳だ。これはチャンスかなと荷物を置いて、途方に暮れた表情を作ったらカモが来たって訳だ」
「それでどうして未だに付き合っているのです?」
「だってさ、あそこまで『彼女欲しい彼女欲しい』とか、『チャンスだチャンスだ』とか、『大丈夫かな大丈夫かな』なんて真横で大声で喋られて見ろ。実際は喋っていないんだが僕の場合はデフォルトで表層思考は声並に聞こえるんだからな。
そこまでずーっと横で色々思われると、ついつい情にほだされるというか、このまま放っておいて帰るのは可哀想だなと思うじゃ無いか。そんな訳で、つい付き合うことになってしまった訳だ。今は本人も多大な後悔をしていると思うがね」
僕には状況はよくわかった。
何せ栗平の彼女欲しいは口癖並だったから。
「つまりは俺の粘り勝ちって訳だ」
そして栗平、そんな状況だったのにめげていない。
むしろ誇ってすらいる。
「タフだよな颯人は」
「お似合いかもね」
「同意」
楓さん、未来さん、理彩さんの意見がそう出たところで。
「ところで明日はテニス、卓球、新製品発表会に模擬戦とあるけれどさ。
何に出るんだい」
「私はテニスと卓球、両方かな。正直先輩方は強いけれどね。他のは合間に見てみるつもり」
「私は模擬戦中心に見てみたい」
楓さんはうんうん頷く。
「なるほどな。まあテニスも卓球もコートは1面しか無いから両方参加しつつ見て回れる訳か。なら僕も両方参加してみようかな、テニスと卓球」
うわ、あれに参加するのか。
でも初回だし、あのテニスのレベルをわかっていないんじゃ……
そう思って気づく。
楓さんは表層思考を読める。
だからきっと誰かの思考を通してレベルに気づいている。
それで参加すると言えるのは、きっとそれ相応の自信があるからだ。
「まあそうだね。僕はこれでも元お嬢様だから、テニスくらいはやっているのだ」
「いや、そういうレベルじゃ無いでしょう」
「まあ見ていてくれ給え。颯人の手前、ちょっといいところを見せてやるよ」
本当に自信がある模様だ。
「さて、それでは風呂にでも入ってくるか。颯人、一緒に行くぞ」
ん、まさか。
「まさか男子用に一緒にはいるつもりじゃないですよね」
「鋭いな、正樹は」
楓さんはにやりと笑う。
図星だったようだ。
「それではここで混浴の理由を説明しよう。
1.先生はもう入った模様だからまた入ってくる可能性は少ない
2.ここには瞬間移動魔法を使うのぞきが出るそうだからな、警戒が必要だ。
3.それに女子用の大風呂は今なお混んでいる。
4.颯人の優先権を持っているのは私だ!他の奴に見せる前に全部見てやる」
おいおいおいおいおい。
「いいのかそれ」
「元々特別科の風呂は混浴だ。今更ここで混浴にしても問題あるまい。そんな訳で行くぞ颯人。なお30秒以内に準備が出来ない場合は、強制的に連行した上着衣をナイフではぐこととする」
「そんな訳だ。では失礼」
ちなみに栗平は全然嫌がっていない様子だ。
ここが春日野と違う処だな。
「何ならうちも出てきたら3人で行く?」
理彩さん、とんでもない提案。
僕は未来さんと思わず顔を見合わせる。
「まだ、やめておいた方がいい、よな」
「そ、そうね」
僕と未来さんの意見は一致。
「度胸無し」
理彩さん、そう言わないでくれ。
一般常識とか青少年的心構えとか、まあ色々ある訳だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます