第88話 楓さん無双
「部屋でもいつもこんな感じだぜ。こっちは何も喋っていないのに思考全部に突っ込んでくる」
栗平がそう言って肩をすくめる。
「まあこの先、宴会場ではすこし黙っているけれどさ。何せこんな感じですぐボロが出るのでな。魔女の皆さんでも表象思考を読まれて平気な方はそんなに多くは無い。そういう意味ではこの部屋の面子は最強だな。未来さんも思考を読まれて云々より、むしろ僕の性格に呆れているという感じだしさ」
未来さんも苦笑している。
その通りらしい。
「大体読まれて困る事なんて、人間本当はそんなに多くないんだぜベイビー。えちい考えなんて、人間も動物である以上当然だ。種族維持本能なんだからな。
私だって色々もうエロエロだ。この魔法属性と性格が災いして相手は今までいなかったけれどな。
そんな訳で颯人には早く免許取って2人乗り出来るバイクを買えと言っている。乗り物が無いとこの辺のラブホには入れないからな。学校施設で致すとまずーい事になりかねない。ただ颯人は金が無いと渋っている。そんなの幾らでも貸してやるのにと言っても自分の金を貯めてからって言って」
色々危険な話が出る中、ふと気になった。
楓さんはお金持ちなのだろうか。
特別科生は大体奨学金でちまちま生活していると聞いていたけれど。
「うちの実家はそこそこ金がある。私が起こしまくる問題にほとほと困って家を追い出したという感じだからね。手切れ金代わりの仕送りはたっぷり送ってくれているぞ。だから何も困ることも遠慮することも無いのだ。ビバ青春、GOラブホという奴で」
「これだからな。雰囲気も何もありゃしない」
あの栗平がそんな事を言うとは。
あの二言目には『彼女欲しい』だった栗平が。
「実は颯人のそのスタンスはあまり変わっていないんだな。だから念の為颯人に言ってある。私より先に誰かと致したら刺すぞ、と。ナイフもほら、こうやっていつでも準備してある」
楓さんはそう言って、いきなり自分のスカートをめくる。
おいおいと思いつつもしっかり見てしまう。
見せようとしたのは太ももに装着したナイフホルダーのようだ。
ホルダーそのものは革製で、色は肌色に近い感じ。
ナイフは最低でも5本。
中折れ式のものではなく、サバイバルナイフのような柄が固定のものだ。
長いもの細いもの小さいものと。
「この魔法属性と性格でな、基本的には家に閉じこもっていた訳だ。それで趣味にしたのが色々な工作。中でもナイフが楽しくてさ。ついつい専用のホルスターまで作ってしまった。
なおパンツが薄い青色なのは、初心な女子高生的エロスを考えてのことだ。やっぱり黒下着よりパステルカラーくらいまでの方が女子高生的にえちいだろう。そう思わないかね、正樹君」
しっかり見てしまった事がバレバレだ。
まあ楓さん相手はともかく、他の2人には恥ずかしい。
そう思ったら。
「今日はGUUのボクサーショーツのグレー。色気より実用。負けた」
おいおい理彩さん。
「合宿中は私服だしパンツスタイルが多いからね、って違うでしょ」
未来さん、つっこみありがとう。
何か色々間違っている中、常識的なつっこみ役は1人はいないとまずい。
「そんな未来は今日はピンクのメッシュだ。どうだエロいだろう」
そして全てを台無しにする楓さん。
思わずズボンを押さえる未来さん。
この混沌空間、どうにかならんのか。
そう思いつつふと気づいて時計を見る。
午後7時20分。
「そろそろ食事です。行きましょうか」
「それでは私は無口で人嫌いという仮面を被る事にしよう」
既に未来さんがぐったり疲れていた。
この中で一番の常識人に今の空間は辛かったようだ。
ごめん未来さん。
でも部屋の平和の為に、どうか頑張ってくれ。
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