第86話 第2回合宿、出発

 そんな訳で。

 金曜日の放課後。

 午後5時40分に男子寮玄関で待ち合わせ。

 3人でバス発着場所の特別科寮へ向かう。


 先発の方がメインだと聞いていたが、結構待っている人がいた。

 顔見知りも結構多い。


「正樹、こっちこっち」

 未来さんが手を振っている。


「お疲れ様です」

 頭を下げて通りつつ、とりあえず未来さんの方へ。


 見ると開発部3人に理彩さんもいる。

 そして2台の台車に乗せられた段ボール4つ。


「これは?」


「今回お試ししてもらう色々だ。全面改良した最新型だぞ。まあそのせいで杏がふらふらだけれどな」

「授業は出席」

 千歳さんの説明と杏さんの補足。


「大丈夫なんですか、体調」


「魔力僅少」

「あと一晩寝れば治るだろ。まあ明里が同じ部屋だし心配はいらない」

 大丈夫かな本当に。


「実際はかなり僕のせいだ。昨日、例の方法で魔法を借りて分担作業していたから」


 その台詞の意味を少し考える。

 それは、ひょっとして。

「春日野も魔法を使った訳か」


「杏さんの魔力を借りてだけどな」

「秋良の方がコア技術詳しい。その方が効率的と判断」


 とすると。


「なら一般人でも魔法が使える訳か。アレを使えば」

「適性も必要なようです。あと発動が弱いので補助具も必要です」


 紬さんの言葉を解釈する。


「つまりトマト食べながら杖持って」

「その辺は明日ラウンジで発表する。楽しみにな」

 なるほど。

 かなり技術も進歩してきた訳か。

 春日野を巻き込んで良かったようだ。

 それとも後に後悔する羽目になるのだろうか。


 一方、栗平の方はどうしているだろう。

 周りを見てみる。

 端の方で女の子と話していた。


 あれが楓さんかな。

 おかっぱ頭にポロシャツ、スカート姿。

 ごく普通の女子高生という感じだ。

 まあ同じ部屋だから後で話もするだろう。


 バスに乗る前に座席表を再度確認。

 開発部関係者は揃って後方だ。

 つまり、あの台車の荷物を面倒見ろという事だろう。

 なお栗平は前の方で楓さんと2人席だ。


 さて、バスがやってきた。

 例によって中年仏頂面が運転している。

 先生も毎回お疲れ様だ。

 特別給とか超過勤務手当とかあるのだろうか。


 とりあえず台車の後についてバスが停まるのを待つ。

 バスが停まって扉が開いて。

 沙霧さんが降りてきた。

「お待たせしました。座席表通りご乗車宜しくお願いします」


 そして後部ドアも開く。


「今リフトをおろしますよー」

 こっちは美都理さんだ。

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