第84話 今日の夕食は手抜きです

 毎度お馴染み理彩さんの部屋。


「それにしても42人は多いよね」

「授業に出ている数以上」


 本日の食事当番は僕である。

 メニューは手抜きなサラダうどん。


 フライパンに挽肉を入れて3倍濃縮の蕎麦つゆ入れて、ちょい砂糖を加えて肉汁うどん風のタレを作って。

 皿に茹でたうどんを入れレタス、トマトを入れ冷凍オクラ解凍を入れて。

 うどん部分に挽肉ごとタレをかけて。

 ごまドレッシングを野菜部分にかけるだけ。

 所要7分程度だが案外美味しい。


「授業に出ている数ってどれ位なんだ?」

 聞いてみる。


「1学年全員で22人で、出ているのは10人かな。どの学年もそんな感じみたい」

 と未来さん。


「なら10人以上多い訳か」


「執行部でも舞香さんは授業に出ない。楓も当然授業に出ていない」


「つまりそんな例外も結構顔を出していると」


「そういう事ね」


 そう言えば前に誰か言っていたな。

 授業よりも出席者が多いって。


「未来は今回テニスや卓球、参加するのか?」


「勿論。優勝は無理でも全力を出し切れて楽しいわよ、あれ」


「錬成合宿の模擬試合も見てみたい」

 今回は理彩さんもわりと積極的だ。


「模擬試合ってどんな事をやるんだ?」


「200メートル四方の山林で上の2点の頂点からスタート。スタートから1分後に魔法使用開始。どんな魔法でもいいから相手を先に倒した方の勝ち」


「でもそれ、危ないんじゃないか」


「舞香さんのような現状認識魔法持ちと心理操作魔法持ちが審判。魔法を出そうとする以前に判定が脳内に結果が直接通知される。それでも魔法が発動した場合は移動魔法等で待避」


「最悪、救急救命魔法もあるしね」

 なるほどな。


「錬成合宿では3箇所の試合場で20分間隔で試合。4日間で1人10回程度戦って学年別の順位を決定。授業と違ってあくまで任意参加だが、なかなか楽しいらしい」


「でもそれって、舞香さんとか結構大変じゃないか。審判でフルに使われて」


「錬成合宿の審判や判定員は先生や大学の先輩よ。そうしないと舞香さんや麻里さんが参加出来ないでしょ」


「先生達まで保養所に泊まれないだろ」


「先生や審判は毎朝学校から保養所へバスや車で来るみたい。1時間かからない距離だしね」

 そう言われればそうだった。


「その辺の前哨戦というか、訓練や告知も兼ねている訳か」


「だからこそ余計に参加者が多いんだと思うわよ

 なるほど。


「あと、魔法杖の事も噂で広まっている。それが楽しみな者もいる」

 それもあったな。

 というところで。

 魔法杖繋がりでこの部屋に来る時見たものを思い出した。


「そう言えばダビデ像とか出来ていたな。黒色でイメージが違うけれど」

 同じ像でも色が違うと大分雰囲気が異なる。


「黒いのは防錆措置の都合だって杏さんが言っていたわ。形は本物と限りなく近くしたって。部屋の都合で高い台座は省略したらしいけれど」


「何か異様に雰囲気が怖くなっていないか、あれ」


 ダビデが不敵に笑う悪魔っぽく見えたり。

 ラオコーン像が正に地獄という感じだったり。

 ニケが堕天使に見えたりする。

 寮とは言え住まいにあれは禍々しくないか?


「魔女の館にふさわしい雰囲気。悪くない」


「という意見がクラスの大多数だったわね。私は白い方がいいと思うのだけれども」


 なるほど、魔女なりの嗜好というものがある訳か。

 とりあえず納得。

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