第82話 後が心配です
食事して休憩して。
20時に少し余裕を持って寮に入ろう。
そう思うと必然的に時間は重なる訳で。
「……」
特別科寮の出口で。
春日野、栗平と思い切り出会ってしまった。
「春日野、柿生、どうしてここに」
こうなったらしょうが無い。
「それぞれ別の組み合わせだが、一緒に飯を食べていた訳だ。あとは歩きながら話そう。向こうの寮の時間がある」
という訳で、後は歩きながら。
「特別科は色々あってさ、神経質になっている生徒が多いらしい。それで僕も春日野も口外出来なかった訳だ」
栗平、ちょっと考えて頷く。
「確かにな。しかし悔しいな。この花園を先に発見した上に、通われていたなんて」
誤解は解いておこう。
「通うと言っても栗平の場合とはきっと違うぞ。柿生とか僕はサークル活動メイン。飯は多い方が節約になるからと誘われているだけ。春日野もそう。夕食を多人数で自炊して食べるのは特別科の文化みたいなものだ。1対1交際の栗平とは訳が違う」
「そうなのか」
栗平は知らなかった模様。
「飯メイトなんて言っている。奨学金暮らしが多いから少しでも節約する為にだそうだ。うちは2年生2人を入れて5人体制。柿生は」
「こっちは3人体制」
栗平、ガッツポーズ。
「そうなのか。よし、なら良し」
「何がいいんだこいつは」
微妙に癪に障る。
でも何とかなった模様だ。
「ただ。特別科のことは普通科には秘密だからさ。その辺は宜しく頼む」
「ああ。それは俺も何度も言われた。だから大丈夫だ」
あとはそういう感じで。
何とかなったかとほっとする僕と、多分春日野。
ちなみに栗平はまだ浮かれている模様。
「そう言えば合宿って、2人とも行くのか」
この話題も振ってきた。
「僕は執行部だから強制参加」
「うちも今回は参加だな。行くのか?」
栗平は頷く。
「ああ。楓は参加した方が色々実態がわかっていいと言っていた。でも特別科って女子しかいないんだろ。先生も女性なのか」
おいおい。
「いかにも中年のおっさんというのがバス運転を兼ねて来る。M組の統括主任で、見かけによらず最強だから注意しておけ」
そう言っておいて、実はもっと注意したほうがいい事を思い出した。
「あとあそこはセクハラ大好きな魔女が多数潜んでいるから注意しろよ。寮の大浴場は混浴だし他にも色々トラップがある」
春日野がぶるっと身体を震わせる。
風呂の件、トラウマになっている模様だ。
「うーん、憧れだな混浴という響きは。でも俺は変わったのだ。それに楓に言われているしな。浮気をしたら刺すぞと」
「おいおい物騒だな」
相手はメンヘラ傾向があるのか。
「心配ない。俺は楓ちゃんにぞっこんだからな。だから浮気はしない」
会うのが実質2回目でこれか。
大丈夫なのだろうか、栗平も相手も。
ふと時計を視て、ある事に気づいた。
「あとは明日だ。時間が無い。あと2分」
「まずい」
3人で男子寮へ走る。
制限一杯、午後7時59分。
とりあえずセーフだ。
寮の玄関でほっと一息。
そしてちょっと入った処で。
「じゃあな。明日も楽しみだぜ。へへへへ」
2人で栗平を見送る。
「大丈夫なのかな、あいつも相手も」
「奴も男だ。自分の責任は自分でとって貰おう」
春日野の返答。
放置、という事か。
まあそれしかないだろうな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます