第80話 二つ名持ちも結構います

 ちょっと気になったので聞いてみる。

「その『真実の目』とか『既知の事実』というのは何なんですか」


「魔法使いとしての二つ名なのですよ」

 会長が説明してくれるらしい。


「2年以上で一定以上の魔法能力があると二つ名が贈られるのです。基本的には評議会やその下部組織から名を贈られるのです。ただ自分の魔法を公にしていない人も多いので、あまり二つ名を学校内で使う人は少ないのです」


「ただ明里の『真実の目』や舞香の『既知の事実』、この2つはまんま2人の魔法の性質そのものでイメージしやすいからさ。あの2人を魔法能力含みで言う時は使ったりする訳だ」

 会長と波都季さんの説明でだいたい様子はわかった。


「他はどんな二つ名があるんですか」

 興味本位で聞いてみる。


「あの2人程そのまま魔法能力というのは少ないかなあ。例えば私は『移り気な炎』なんて名前だけど、イメージ湧かないでしょ」


 遊里さんは『移り気な炎』なんて二つ名なんだ。

 本人はイメージ湧かないと言うが、僕には何かわかる気がする。


「ただ二つ名は3年でも持っていない生徒が半数以上。ですから普通は使わない。二つ名を持たない者に二つ名を聞くことは失礼に当たる」


 麻里さんが久々の長台詞でそう注意してくれる。

 なるほどな、だから聞いた事がなかった訳か。


「ちなみに麻里は『黒い優等生』という二つ名持ち。そういう使用魔法がわからない二つ名も結構あるんですよ。

 あと有名なのは杏の『器用な手』かな。あの子が器用なのは物作りだけじゃないんだけれどね、本当は」


 遊里さんが更に説明。

 確かに杏さんの物作りは『器用な手』だな。

 でも物作りだけじゃ無いとはどういう事だろう。

 前にも遊里さんは杏さんの事で何かひっかかる事を言っていた気がするな。

 気にしなければそれまでなのだけれど。


 会長とか歩美さんはどんな二つ名があるんだろう。

 もし持っていない場合は聞くと失礼に当たるから、聞けないけれど。


 さて。

 二つ名はいいとしてだ。

 こっちの質問もしておこう。


「ところで伊勢原楓さんって、どんな人ですか」


「うーん。未来、知っている?」

 遊里さんは知らない模様だ。


「私も正直ほとんど知らない。授業や行事には一切出てこないからな。寮の廊下で部屋から出てくるところを1回見ただけ。それも部屋番号と部屋の名前札で楓だってわかっただけだし。理彩、知っている」


「ある程度は」

 理彩さんは頷く。


「楓も私と同じ精神系魔法持ち。だから時々話をしたりする。基本的に人嫌い。私と違って嫌ってもいるし避けてもいる。

 だから不可解。楓が魔女だろうと友達を作って自分の領域に招き入れる等、私は想像不能。普通科生徒なら更に問題外」


 えっ?

 となると……


「栗平が騙されているって可能性は」

「楓は人を騙す必要が無い。魔法でいつでも何処でもどうにでも出来る」


 となると。

 何がどうなっているんだろう。


「想像で事実を作る必要は無い。舞香さんに聞いた方が早い」

 うん、理彩さんの言うとおりなのだけれど。

 ちょっと心配だ。

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