第77話 馬鹿はうつるらしいです
そんな訳で、小型の紙パック入り野菜飲料48個に魔法注入作業をして。
「これがあれば高校特別科の有用性を理事に説得するのに充分よ。ありがとう。あとこの機械は学内で使う分には自由に使って下さいな。
もう1件、魔法杖の方も今週中には決着をつけて連絡しますね」
そう言って副学園長は野菜飲料の大箱2個を抱えて姿を消した。
そして。
「最初からこういうシナリオだったんですか」
疲れ切った紬さんが誰にとも無く質問。
「悪い。実はそうだ」
千歳さんがそう答える。
「そろそろ公開していい時期だと思ったからな。会長や歩美と相談してさ」
「足柄副学園長の予定とかは大丈夫だったんですか」
「あのクラスの魔法使いは任意の場所と時間に同時存在することが可能ですから。こちらの案件の必要十分性さえ備えれば問題ありません」
「それって、瞬間移動プラス分身って事か」
春日野の質問に歩美さんが首を横に振る。
「事象面ではそうですが。正直あのレベルの魔法使いはそういう個別レベルの魔法を遙かに超えた存在です。魔力が見えないとわかりにくいですけれど」
うーん。
やはりその辺は魔女同士で無いとわからないようだ。
あ、そう言えば忘れていた。
「そう言えば副学園長が魔力を込めたイチゴを食べた時、何か色々な物を見たり感じたりしたような気がしたんだけれど、気のせいか」
「あれは未来視の魔術のひとつなのですよ」
会長が答えてくれた。
「これから先辿りうる可能性の高い未来を垣間見せる魔法なのです。見る方が慣れていればあれだけでかなりの未来を知ることが出来るのです。ただ実際は、何となくのイメージ程度しか見る事は出来ないのです」
なるほどな。
あれは僕の未来の可能性のひとつだった訳か。
具体的な事は何一つ覚えていないけれど。
悪くはなかった感じだけは何となく覚えている。
「何か正樹は面白い物が見えたのですか」
「いいえ。何となくのイメージだけですね」
会長、にやりと笑う。
「おかしいですね。私にははっきり見えたのですが。将来私と結婚して、私と5人の娘の尻に敷かれる正樹の姿が」
「ダウト!」
理彩さんが告げる。
「私の夢と矛盾する。その夢は正しくない。もしくは嘘」
「それでは私はこれで」
歩美さんが去って行く。
そして。
「これでも私は空間操作系魔法使い、時間魔法に一番近いのですよ」
「心理魔法発動。9割9分の確率で嘘と判断」
「よろしい、ならば
おいちょっと色々待て!
何を人に無断で賭けているんだ!
そう思った時だ。
会長の姿が消えて。
そして波都季さんがため息をついた。
「理彩が大分明るくなったのはいいけれどさ。あまりあの
「了解。反省する」
おいおいおい。
「参考までに会長は?」
「ちょっと空間をねじって閉鎖した処に放り込んでおいた。いくら会長が空間操作の専門家でも、中から脱出するのは30分かかるだろ」
相変わらず会長、酷い目に遭っている。
「それでは皆さん、今日は解散ですよ」
何事も無いかのように遊里さんがそう宣言して。
そして新製品内覧会は幕を閉じたのであった。
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