第74話 魔法薬作成機の御披露目
行ってみると。
いつも通りの開発部だった。
強いて言えば重そうなバーベルが置いてある点。
ちなみにあのバーベルは多分春日野の私物。
自室で暇な時はあれを上下させるとか言っていたから。
それが何故ここにあるのかは謎だけれど。
そして部屋にいるのもほぼいつもの面々。
千歳さん杏さん紬さんに春日野。
「あれ、さっきまで買い物だったよな」
春日野に尋ねる。
「ああ。部屋に帰って荷物を整理した時点で会長に呼び出しを食った。なので仕方なく杏さんと2人でここに来たところだ」
「あのバーベルは春日野のだろ」
「ああ。会長に寮の部屋番号を聞かれたので答えたら、いつの間にかここに置いてあった。あれを持ち歩くのは大変だから、出来れば早く戻して欲しいのだが」
「参考までにあれ、何キロあるんだ」
「シャフトが20キロ、両側がそれぞれ50キロの120キロ。気分転換にちょうどいい重さだ」
おいおい。
120キロを持ち上げて気分転換かい。
このごつい筋肉達磨め。
そして。
「ごめんなさい。今回は多分、私の研究です」
紬さんがそう言う。
何の研究か聞こうとしたところで。
どやどやといつも準備室にいる面子が入ってきた。
そして会長が口を開く。
「さて、今度は魔法薬製造のデモンストレーションなのです。そんな訳で紬と杏、そして秋良は説明宜しくなのです」
「と言っても、デモの用意はしていないですけれど」
「なら私が司会をするのです。言った通りに動くのです」
つまりこの御披露目は開発部企画では無く、会長の独断専行。
ただ千歳さんが微笑んだまま何も言わず見ているところを見ると。
この中では千歳さんにだけ内諾なり何かあったのかもしれない。
「まず紬、そこのでかい機械について説明するのです。場合によっては杏や秋良に振ってもいいのです」
という訳で。
春日野が使っている机の上に置かれた、
○ 長さ2メートル
○ 高さ50センチ
○ 幅だいたい60センチ位の
○ コイルだの銅線だの液体入りの瓶だの色々ついた
怪しげな機械の前に3人が並ぶ。
「これは液体に魔法効果を付与する為の機械です。具体的には
① 中央のコイル2つの間の空間に
② 容器に入れた液体を置いて
③ こちらの操作部を握って
④ 魔法をかける要領で魔力を投入
する事によって、液体に魔法効果を付与します。
この液体を飲んだりかけたりすることにより、かけられた魔法効果を使う事が出来ます。現在は主に治癒魔法を付与する実験中です」
まずは紬さんがそう説明。
次に杏さんと春日野が目を合わせて。
春日野の方が口を開く。
「装置の原理はこの前の魔法杖の強化版だと思ってくれていい。ただ魔法の付与に特化するために、
① 魔法の増幅機能を更に上げたり
② 放出された魔法の純度や位相を揃えたり
する機能が付加されている。結果、持ち運びが困難なサイズにはなったが、普通に魔法を2回かける程度の力で1回分の魔法薬を作れるようになった」
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