第70話 とりあえず、ほのぼの系

「そう言えば未来さんと理彩さんが組んだきっかけってどんな感じなんだ。飯メイトは一般的な制度だって聞いたけれど」


「簡単な話だ。私が理彩を頼った」


 えっ。

 普段の言動を見ていると反対のような気がするけれど。


「何せこの学校入学で日本に来た訳だからな。一応サポート組織で勉強していた。だから日本語もある程度話せるし日本の生活習慣も最低限はわかる。


 でも実際異国で学生生活となるとな、やはり不安になる訳だ。


 そのせいかうまく動けない。たった18人しか出席しないクラスでも上手く話せない。我ながら神経細いなと思ったよ。

 そんな時に声をかけてくれたのが理彩だった。そういう訳だ」


「特別科は基本的に最初は皆そんな感じ。皆ある程度性格的に曲者だし。対人関係に神経質になっている人も多い」


 そう言えば明里さんが言っていたな。

『魔法使いは、

  ○ 周囲から隔絶したところで生きていて常識が無いか

  ○ 周囲から敵視あるいは差別されて良識が無いか否定している

のどっちか』

だなんて。

 勿論半分は冗談なんだろうけれど。


「そんな訳で、声をかけてくれた理彩に尻尾振ってついて行った訳だ」


「でもこの学校では理彩が最初だった。表層思考がだだ見えだという事を公言して、それでも『それがどうした』と言ってくれたのは」


 なるほどな、と思う。

 その辺の信頼関係が今に至っている訳だ。


 でも、そういう事は。

 僕の表層思考もだだ漏れという訳だよな。

 まあでも、今更という奴だ。

 その辺の考察は明里さん相手に色々やったし。


「ちなみに2番目は会長だった。『そんなの表情読むのと変わらん!気になるなら思う存分見るなり読むがいい。見られて困るものなど何も無い。何ならついでにこの場で全部脱ぐぞ』」

 おいおい、脱ぐな。


 でも同時になるほどな、と思う。

 奇行をやらかしつつも会長が慕われている訳がなんとなくわかる。

 色々やらかしすぎだけれども。


「ちなみに今日の会長の脱がせる攻撃。本気の会長は認識しただけで対象物を移動可能。だからあれはお遊び。止め役が入る前提」


 言われてみれば確かにそうだ。

 触らなければ移動出来ないなんて制限は無かったよな。

 資材だって見ただけで動かしていた物も会ったし。


 そう思って気づく。

 思い切り僕の思考、読まれたな。

 まあ今更気にしないけれど。

 本当はちょっと気になるけれど、まあ無視。


「正樹もそう。この前の合宿の時、明里さんと話しているのを聞いた。心を読んだ方が被害者という発想は滅多に出ない。今だってわざと記憶と思考を読んだのに怒らない。だから正樹は信頼出来る」


 でも逆に今までは色々苦労したんだな。

 今の言葉の肯定の裏返しは、過去の否定。


「でも今は今までで一番楽しい。だから問題無い」


「まあそんな訳で、私は理彩と組んでいる訳。日本人だから買い物とか外に出る時も頼りになるしね。ついでに荷物持ちも増えたし」


 荷物持ちは僕の事だな。

 でもまあいいだろう。

 僕としても今の生活は楽しい。

 多分今までの人生で一番。

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