第69話 まずは平和な今日の食卓

 結局。

 会長にかかっていた魔法は解除。

 怒っても指導しても無駄だろうという事でそのまま放免措置。

 僕もついていって特別科の寮へ。


「うーん、折角注文品を届けるという善行をしたのになんて事だ」


「少しは自分の言行を反省して下さい」

 なんて言いながら。


「そう言えば、今度の合宿は来週ですか」

「ああ。24の金曜日から26の日曜日まで。その頃には杖の件もカタがつきそうだと連絡があったからな。特別科全体にあの魔法杖を披露したい。大人数で使い込めば改良点なども色々出るだろうしな」


 言っていることはまともである。


「でもあの魔法薬でまた副学園長に手間取らせそうですね」

「まあな。でもあれは理事あたりを説得するいい材料になる。むしろ喜んで貰えるだろうよ」


 会長とは寮入口で別れる。

 寮受付前の階段をあがり、3部屋目。

 階段をあがり203号室のインタホンのボタンを押す。


「どうぞ」

 中に入る。

 もう何度となく来た理彩さんの部屋だ。


 理彩さんはキッチンで揚げ物作成中。

 未来さんはちゃぶ台の所にいる。


「何かあった?大丈夫か?」

 いきなり理彩さんに尋ねられた。


「大丈夫だけれど、何故」

「私のと似た魔法の反応があった」


 何だろうと思って気づく。

 会長の動きを止めた魔法か。


「会長がまた下らないおふざけをして、そのせいで杏さんが微妙に混乱して、駆けつけた明里さんに助けて貰った。明里さんは杏さんと仲がいいから」


「わかった。明里さんは私と同じ系統の魔法使い。あの人なら確かにあんな魔法の反応になる」


 確かに似た魔法だなとあの時も思った。

 違いは時間経過に対する許容くらいかな。

 理彩さんのは放っておくと致命的な事態になるそうだから。


「会長は何をやったんだ?」

「彫像が裸だから、全部脱いで見せろと迫ってきた」


 性器を、の部分はカットだ。

 同学年の女の子2人の前でその単語を口に出せる程僕はさばけていない。


「なるほど、いかにもだな」

 未来さん、納得。

 炊飯器から電子音の音楽が流れた。


「もうすぐ御飯」

 というので、僕と未来さんで食器などを運ぶ。


 ◇◇◇


 夕食は余り物の天ぷら。

 メインは菜の花の天ぷらで、他は色々ごちゃ混ぜな掻き揚げ。

 小型メンチカツみたいなのもある。


「いただきます」

 と食事開始。


「もう食材が限界」

「そうだね。正樹は明日、予定がある?」


 土曜日だけれど予定なんて物は。

「特に無いよ」


 正確には全く無い、だけれども。


「なら明日8時50分ここの寮の前集合ね。業務用スーパーの開店は9時だから。朝一で行けばお買い得品を確実に買えるし」


 金髪ツインテールという見かけと今の庶民的な台詞や状態が色々あっていなくて。

 ちょっと笑える。

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