第66話 物作り屋の心意気?

 特別科寮の裏口から入って寮内を通り抜け、表から出て。

 ここから特別科校舎はすぐだ。


 会長は中に入らず外の非常階段をのぼって、4階非常口から中へ入る。

 ちょうど開発部が使っている教室の前に出た。


 トントントン、とノックして。

「私だ」


「ワタシという名前の方は存知上げないな」

 中から千歳さんの声が聞こえた。


「入るぞ」

 全く無視して会長は扉を開ける。


 中は僕がいた数日前とほぼ変化無し。

 違うのは春日野がパソコンで何やら設計をしているところ。

 そして机の上に何やらつくりかけの大がかりな機械が見えるところだ。


「とりあえず藤沢先生が頼まれていたらしいもの。杏さん宛」

 僕は銅線を見せる。


「助かる。材料不足だった」

 引き取ったのは春日野だ。

 こいつ、完全にここの一員になっているな。


「どうだ、ここでの様子は」


「今は紬さん依頼の魔力投射器の作成中。原理は杖と同じだ。照射魔力の純度がより高いのと、照射対象が装置内だから増幅装置内に組み込んで相乗効果出せるのとが違うが」


「上手く行けば、飲む事によって作用する魔法薬が出来る予定です」

 紬さんがそう簡単に説明してくれる。

 それって結構大発明なんじゃないか。

 そう思っていると。


「それで増幅機構に指向性を持たせるべくサブアンテナを2本つけ、更に魔力が共振するようにソレノイドコイルで覆って。その辺で資材が足りなくなった。それで杏さんが担当の先生にお願いした訳だ」


 春日野の説明が覆い被さった。

 うん。

 相変わらずわからない。

 でもとんでもないものを作っているのだけは理解出来る。


「それでどんな魔法薬が作れるんだ」

「最初の作成は風邪薬です」

 それだけ聞くと普通の薬と変わらないような。


「只の風邪薬じゃないぞ。飲んだ次の瞬間、風邪が治る風邪薬だ」

 おい春日野、それってかなりトンデモでは。


「2秒くらいはかかるかもしれません。治療魔法をそのまま飲料に閉じ込めたものですから」

 ちょっと待て。

 そんなの万が一市販されたら大事だろう。

 製薬会社やら医者やら薬屋やら大問題になるぞ。


「まあその辺はまた副学園長なり理事なりの案件だろう。さて正樹君と秋良君、ものは相談なのだが」


 会長がそんな事を言う。

 嫌な予感が。


「内容にもよりますが、何ですか」


「実は杏に今回の彫像制作の件をお願いしたのだよ。何とか了解して貰った」


「ラオコーン像とサモトラケのニケ、それにミケランジェロ版ダビデ像。了解」


「それでだ。杏からお願いがあったのだ。

 サモトラケのニケ像については問題無い。他の2つの像も大体は大丈夫。


 ただしだ。ニケ像以外の2つの像に計4個ついている男性器について。実物を見たことが無いので正確か不安だという意見があった。

 そこで2人のうちのどちらもいい。両方だとなお歓迎だ。参考までに性器を見せてくれ。頼む!」

 おい!

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