第65話 お届け完了

 そして。

 大きいクレーン付きトラックが後退しながらヤードに入ってきた。

 運転席には藤沢先生が座っている。

「適当にまとまったら教えろ。クレーンくらい操作してやる」


「ありがとうございます。もう少しです」

 という事で。


 異空間魔法持ち2人がせっせと運んで。

 高熱魔法使いが切ったり分別したりして。

 ワンボックスカー1台分くらいの大きさの山が出来た。


 そして。

「それでは皆さん、離れて下さい。あと沙霧、念の為熱結界を材料周囲に。そして遊里さん。クレーンの荷重は500キロなので、10個口程度に結着お願いします」


「了解です。では行きまーす」


 何回か熱の衝撃が発生して。


「ふう、いい仕事したかなあ」

 そう遊里さんが言った時には、10個の大体直方体になった固まりが出来ていた。

 完全にきっちりした金属塊ではなく、適当にあちこちに隙間が空いているけれど。


「では未来さん、この金属塊を20度程度に冷やしていただけますか」


「了解よ。えいっっと。こんなモノかな」


「上出来です。それでは先生、お願いします」


「おいよ。では離れていろ」

 トラックが加工済みの資材に横付けされる。

 見るとトラックには既に銅線の端切れらしいものが積載されていた。

 杏さんが欲しがっていたと言っていたから、魔法杖の関係かな。

 そして先生が器用にワイヤーとクレーンを使って、車に資材を乗せ始めた。


「手伝った方がいいでしょうか」

 一応舞香さんに聞いてみる。


「先生1人に任せておいた方が無難ですし早いです」


「この辺の作業で生徒に怪我させちゃまずいからな。一応玉掛けの資格も持っている。まあそこで黙って見てろ」


 玉掛けの資格なんて。港湾作業担当じゃ無いんだから。

 それにしても疑問だ。


「藤沢先生って、幾つ資格を持っているんですか」


「学校で使いそうなのは、大型免許、大型特殊免許、大型二輪免許、ボイラー技士、危険物取扱者甲種、小型船舶1級くらいでしょうか。若い頃は色々な仕事をしながら放浪していたそうで、玉掛けとかX線と潜水士とかはそのころ取ったそうです」


 魔女以上にわけがわからない人物であることは良くわかった。

 そして。


「それじゃ、この荷物は特別科寮の裏口側の空き地に置いておいてやる。錆びたりする前にとっとと片付けろよ。以上」

 先生、トラックに乗って走り去ってしまった。

 あっさりしたものである。


「それでは理彩さん。魔法を解除して下さい。作業終了です」

 ふっと気圧が変化するような感触がした。

 そして。


「疲れたのです。トラックに乗せて貰えば良かったのです」


「荷台には載せてくれないでしょ。藤沢先生は安全第一だし」


「何なら魔法で部屋に戻ればどうです」


「重い物を魔法で運びすぎたのですよ。魔力がほぼ限界なのです」


「私もだ。いい汗かいた」

 これは波都季さんだ。


 学内端にあるリサイクルセンターから特別科寮まで約500メートル。

 とぼとぼと皆で歩いて。

 僕は途中で準備室からカバンを取ってきて。 

 特別科の寮の裏に回る。


 でっかい鉄の塊が10個。

 そして銅線が置いてあった。


「この銅線は直接杏に持っていってやろう。という事で正樹、荷物持ちでついてこい。杏に材料が揃った事を報告しに行く」


 という事で。

 僕は銅線を持って会長の後をついて行く。

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