第64話 材料選別中

 リサイクルセンターとは、要は学内のゴミ捨て場だ。

 大学部が大物を色々扱う関係もあり、そこそこ規模は大きい。

 そしてリサイクルセンター事務所では、もうお馴染みの顔が待っていた。


「遅いぞ、来るのが」

 藤沢先生である。


「先生すみません。全員集合を待っていたらこの時間になって」


「まあ普通科もいるから仕方ないか。それでモノはどうする」


「本当は青銅とかが雰囲気なのですけれど」


「銅は高いから学内といえど大量に只で下ろすのは無理だぞ。せいぜい鉄だな。アルミは在庫が0.5トンも無いそうだ」


「鉄の在庫はどうなんですか」


「質と形状を問わなければ幾らでもあるとよ」


 藤沢先生の言葉はぶっきらぼう。

 でもリサイクルセンターに事前にやってきて申請を済ませ、在庫まで確認しておいてくれた訳か。

 やっぱり面倒見のいい先生だ。


「なら鉄、出来ればステンレス系で」


「おうよ。ちょっと待ってくれ」

 藤沢先生は書類に何かちょこちょこと書いて、受付に提出する。


「はい、書類OKです。それにしても高校部、それも特別科が申請を出すのは初めてですね」


「最近は世知辛くてね、高校部にも色々実績が求められるらしいってさ」

 なんて言いながら先生は交付されたコピーを受け取る。


「さあ行くぞ。さっさと済ませたい。教員は超過勤務が無いからな」

 そう言って事務所の裏のジャンクヤードへ。

 古い機械だの壊れたロッカーだの雑多な金属製品が積まれている。


「今回のターゲットはこんなところだ。銅は2年の石田が欲しがっていた分。これはキープ済みだから横取りするなよ。それではトラック持ってくる。そっちはモノを見定めて集めておけ」

 そう言って先生はまた先の方へと歩いて行く。


「何か毎回思うんだけれど、藤沢先生って面倒見いいよな」


 舞香さんが頷く。

「特別科は藤沢先生がいるから成り立っているようなものです。

 高校設立時、副学園長が藤沢先生をスカウトしてきたそうです。他の先生もそれぞれ尊敬すべき先生ですけれど、多機能性とマメさ、そしてタフさでかないません」


「なんやかんや自由にやらしてくれるしな」

 あの外見だが評判自体はいいようだ。


「ただ怒らすと洒落にならないらしいぞ。門限遅れたところを見つかって、咄嗟に魔法で隠蔽・脱出しようとしたけれど、気合い一発で魔法ごとふっとばされた先輩がいたそうだから」


 波都季さんの言葉に会長がにやりとして一言。

「何をかくそうそれは私なのですよ」


 うん、理解した。

 藤沢先生がただ者では無い事は。

 会長の神経がただ者では無い事も。


 さて。

「それでは作業にかかります。理彩さんすみません。ヤード全体に関係者以外不可視の魔法をかけていただけますか」


「わかった」

 ふっ、と何かの気配がして、消える。


「それでは会長と波都季、準備お願いします。まずは右の壁際、下になっているエの字型の鋼材」


「はいですよ」

 会長がとっとこ歩いて行ってその鋼材を掴む。

 ふっとその鋼材が消えて。

 手前の空きスペースに出現した。


 どうも舞夏先輩が指示して、他が動くという感じだ。

 先輩後輩あまり関係ない感じ。

 使用魔法を考慮した適材適所という奴だろう。


 そして今動いているのは会長と波都季先輩。

 空間魔法持ちの2人だ。

 舞香さんの指示にあわせて2人で材料を運んでいる。


 そして。

「うーん、ここまでは質のいいステンレス材のみの具材だったのですが、ここからは少し加工が必要です。遊里さん、スタンバイお願いします」


「どうぞ」


「それでは波都季。そこから3メートル前進右2メートル。その下に埋まっている業務用シンクをお願いします」


「了解、ほいよ」


「それで遊里さん。今のシンクについているゴム部材を全部熱で燃焼させて下さい」


「了解ですわ」


 そんな感じで。

 目の前にステンレス資材が積み重ねられていく。

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