第56話 特別な慰労について

「理解した。確かにこれは面白そうだ。引き受けよう。というかやらせてくれ」

 あっさり春日野は了解してくれた。


「その代わり、向こうの電子工作部との掛け持ちでいいか。あっちはあっちで新しい知識を学ぶのに必要なんだ。それに両方掛け持ちすることはこっちの開発にもマイナスにならないと思う。

 もちろんここの事は他には口外しない。条件はそれでどうだ」


「充分だ」

 あっさりと交渉は成立した。


 そして春日野は。

「実はこの魔法杖。もう少し改良出来ると思う。それには色々実験が必要だ。まずコンデンサに相当する物が魔力でも作れるかの実験をしたい。原理を図に落とすとこんな感じだ……」


 いきなり杏さんとなにやら相談を始めた。

 早すぎる。

 流石技術屋?と言っていいのだろうか。


 まあこれなら僕はめでたくお役御免だな。

「それでは上手く行ったみたいなんで、僕は失礼します」

「それでは私達も」

 舞香さんと波都季さんも立ち上がる。


「ああ。助かった。本当にありがとう。なお謝礼は発表を持って返させてもらう」


 その言葉の意味は、つまり。

「謝礼は何も無しという事ですね」


「すまん、予算に余裕が無くてな」

 という訳で。


 波都季さんの能力で僕ら3人は特別棟の準備室へ戻ってきた。


「どうだった」

「放っておけば早々にあの魔法杖の改良版が出来そうです」

 そんな感じだ。


「なら特別科廃止の可能性も少しは遠のいたのかな」

 僕はそう言って。

 周りから注目を浴びて。

 そしてしまった、と気づく。


 そう言えばこの話、僕の他には会長、麻里さん、遊里さん。

 そして開発部の3人だけの話だったのだ。

 でも。


「いえ、それはまた別問題でしょう」

 舞香さんがそう口を開く。


「歩美さんが告げたのはスポンサー側からの警告の可能性。つまり、人間の方の動きです。魔法使いの方の動きではありません。

 つまり、この魔法杖を開発した事をステップにして、スポンサーを納得させる何かを開発するなり、開発するビジョンを見せるなりする必要があります」


 舞香さんは知識の魔女。

 だから彼女には秘密は通用しない。


「そういう事だ。悪かったな、皆に言わないでいて」

 会長が引き継いだ。


「合宿中に歩美がそんな事を言ってきてさ。それで開発部交えての今週の色々になった訳だ。1年3人に開発部に行って貰ったのもその関係。

 まあ開発部はかなり強力な新人を引き入れることに成功したようだからな。それに第2段階として紬が開発している薬なら、スポンサーは充分納得させられるだろう。販売出来るかどうかは別としてだ。だからまあ、心配はいらない。

 という訳で秘密を漏らした正樹へのお仕置き、何か面白い案があれば挙手!」


 おいおい。

「何故そういう話になるんですか」

「その方が面白いからだ」


 会長、勘弁してくれ。


「どちらかと言えば僕は功労者だと思うんですけれど」


 あ。

 会長、悪そうに笑った。


「なら功労者には特別な慰労をしないとな。

 特別と言えば、特別科の寮には普通科には無い大浴場がある。混浴だから正樹が入っても問題は無い。あそこでゆっくり寛いで貰って、私達全員でサービスするというのはどうだ。何なら気に入った女の子はお持ち帰り可という事で」

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