第50話 試作品内々披露会、の筈が……
昨日はそのまま、ちょっと気まずい感じで別れ。
放課後また特別教室棟を抜けて先に行こうとしたところで。
特別教室棟最初の階段の手前に出現した波都季さんに、
「正樹、今日はこっちだ」
と呼び止められた。
うーん、試作品を見たかったのだけれどな。
そう思いつつ2階へ階段でのぼって。
数日ぶりだな、と思いつつ準備室へ。
入ってみると人口密度がいつもより高い。
というか、フルメンバーに未来さん理彩さんに、開発部の3人までいる。
「どうしたんですか」
目の前に未来さんがいるので聞いてみる。
「昨日開発したあの杖の、第2次試作品の内覧会だそうだ」
中央には何か大分形が変わった魔法杖らしき物。
色々な人がそれを試している様子だ。
あれから余裕時間どの程度あったのだろう。
授業時間等を考えるとせいぜい数時間だろう。
しかし昨日僕が作ったものとは既に別物。
1メートルくらいの白色で、杖と言うより未来武器という感じのデザイン。
板を滑らせて調整していた部分もダイヤルを回す方式になっている。
「何か随分格好良くて調整も楽になっていますね」
「材料と原理は全く同じ。使いやすいよう作り替えただけ」
杏さんはそう言うけれど。
「どうですか。使い心地は」
取り敢えず真っ先に使ってみただろう千歳さんに聞いてみる」
「製品としての使いやすさは段違いだな。正樹には申し訳無いけれど。ただ性能そのものは同じだ。でもこれなら色々な壁を突破出来る可能性がある」
かなり満足している様子だ。
「その色々な壁とは」
「自分に向いていない魔法でも、これを使えばある程度使える。例えば私が使えるのは風、光、治療系で熱操作とか普通は使えないんだ。全くそっち方面の魔力が無い訳じゃない。少しはあるけれど発動するには足りないだけだ。
でもこの杖を使えばそんな魔法も使えるし練習出来る。練習出来ればそれなりに魔力なり効率なりがあがる。結果使えなかった魔法が使えるようになる可能性がある訳だ。この影響はかなり大きいと思うぞ。まあまずは色々試行錯誤からだけれどな」
「魔法薬も同じ。増幅して強力化した魔力でなら新たな効果が出るかもしれない」
そんな話をしていたところで。
準備室の扉がノックされる。
「はい」
「歩美です。足柄副学園長がお見えになりました」
ふっ。
あたりが一瞬で静まりかえる。
何だろう。
副学園長というからにはお偉いさんなんだろうけれど。
さっと遊里さんが扉のそばへ動いて。
扉を開ける。
「どうぞ」
入ってきたのは歩美さんと、20代後半くらいの女性だ。
副学園長という役職からすると大分若く感じる。
「何かとんでもない物が出来たそうね。それで検討中のところ申し訳ないけれど、私にも確認させて頂いてよろしいかしら」
言葉遣いは丁寧に聞こえる。
でも普段が普段の魔女の皆様が固まっているところを見ると、きっと何かある。
魔法使いではない僕にはわからないけれど。
「こちらです」
麻里さんが試作品の杖を彼女に渡す。
「どれどれ。これが調整のつまみね」
彼女は説明を聞かずに、そのくせ慣れたような手つきで杖を構えた。
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