第30話 対策会議の結論

 食事の片付け終了直後。

 会長は副会長の麻里さんと遊里さんを拉致同然の手段で捕まえて。

 見知らぬ10畳の和室に連れ込んだ。

 元々は業者用の和室で普通使わない部屋らしい。

 当然僕も一緒だ。


「という訳で歩美から話があった。私はこれを警告と捉えたんだがどう思う」


「是認。学校側か、スポンサー側からの警告の可能性」

「私もそう思います」

 遊里さんはそう言って、そして僕向けに説明してくれる。


「うちの学校はスポンサーからの出資によって成り立っている学校なんです。ですからそっち方面の意見にはわりと敏感なのですわ。

 おそらくスポンサーから特別科についてマイナス方向の意見か何かがあったのでしょう。そして歩美さんはその情報を入手した。だからそれを覆すべく、特別科としての何か成果を出してくれ。存続すべきだという理由を作ってくれ。

 そんな処だと思います。ただでさえM組は別扱いで費用がかかりますからね」


 うん。それは何となく理解した。

 でも疑問も追加される。

「でもそれを言ってくるという歩美さんって一体どういう人なんですか。生徒会長とも1人生徒会とも聞きましたけれど」


「一口で言えばM組全体のお姉さんみたいなものですね」

 と遊里さんが言う。


「M組は1学年20人いるかいないか。ですので生徒会もありません。学級委員がその変わりです。でも実際それでは生徒全員の要望や意見なんて通らないですよね。その為に最年長の学級委員である歩美さんが色々動いている訳なんですよ」


「歩美はあれでなかなか優秀なんだ。物質具現化の他に、高速演算だの近未来予知だの状況把握だの交渉だのの魔法を持っている。その能力を駆使してM組生徒と学校側の交渉を事実上1人で引き受けているんだ。だから1人生徒会という訳さ。まあ間違いなく大した奴だし、奴の意見は無視する訳にはいかない」


 さっきの様子と違って会長、歩美さんを褒めている。

 まあお互い色々認め合っているという訳なのかな。

 波都季さんはタイヤの両輪だって言っていたし。


「それでどういう手を打つんですか」

「この合宿が終わった後、月曜日だな。正樹にちょっと特別科まで出向いて貰おうと思う。あわせるべき奴と見せるべき物があるような気がするんでな」


「誰ですの?」

 遊里さんは心当たりが無いらしい。


 でも麻里さんにはわかったらしい。

「開発部」

 そう一言つぶやく。


「って麻里さん、あそことうち仲悪いじゃ無いですか」

「適材適所」


「そうは言っても」

「背に腹」

 なるほど。

 麻里さんとの議論はこんな感じになるらしい。

 というのは置いておいて。


「どういうところですかそれは」

 かなり遊里さんが渋っている処から見て、いい予感はしない。


「特別科の空き教室で活動している、魔法研究会うちの分派ですわ。基本的に研究大好きで人付き合いがまるで無くて。今回の合宿もうちの部員だけれど誰も来ていないんですよ」


「他人は他人、それもまた主義」

「と麻里さんはいいますけれどねえ。正直あそこの人はちょっと苦手です」

 表情からして遊里さん、確かに苦手にしている感じだ。

 そういう処に僕は行かされる訳か。

 何か不安になってきたぞ。


「まあその辺の話は私が千歳とつける。どっちにしろ開発部はこの合宿に来ていないし、終わった後の話だけれどな」


「千歳さんってどなたですか」

「開発部の代表格の船橋千歳ふなばしちとせさん、3年生ね。他に開発部は2年生が2人います」

 そう遊里さんが説明してくれた処で。


「という訳で臨時三役会議は終わりだ。合宿の残りを楽しむぞ」

「承知」

「そうですね」

 と3人が合意。

 会長の魔法により再び僕らは飛ばされる。

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