第29話 1人生徒会からの忠告

「ただ、活動が親睦を深める内容ばかりになっているのが生徒会側から見て気になるところです。その辺りを是正していただかないと、後期の予算は削減やむなしとなるかもしれません」


「委員長、横暴だぞ」

「これは生徒会会計の権限で言っています」


「生徒会は会長も副会長も書記も会計も歩美1人じゃないか」

「人数がいませんもので」

 とんでもない事実をしれっと躱して歩美さんは微笑む。


「なにせ特別科の予算は少ないですからね。生徒の学費や生活の補助を考えると無駄遣い出来ないのですよ」


「しれっと学校側の代弁までするな」

「それも生徒会長の職務ですの」


 ちょいちょい、と僕の肩が指でつつかれた。

 見ると苦笑している波都季さんだ。


「この掛け合いはいつものお約束だ。だからあまり深刻に考えなくていいぞ」

 ひそひそ声で僕に説明する。


「この2人は仲が悪いんですか」

 僕も同じ程度の音量で尋ねる。


「いいや、むしろ車の両輪みたいなもんだ。ただお互い立場が違うからこんな感じになるだけ。ただ今回は歩美さんが何か企んでいる感じだな」

 注釈おわり、という感じで波都季さんが去って行く。

 スパゲティのおかわり目指して。

 なにはともあれ状況了解。


 で、魔法研究会会長と1人生徒会のやりとりはまだ続いている。

「こんなに真面目に活動している課外活動、特別科ではうちだけだぞ」

「それは認めます。何せ課外活動に割り当てられた予算の半分を使っていますから」


「もう少し欲しいところだけれどな」

「なら活動の幅を広げて下さいな」


「どんな」

 会長の質問に歩美さんがにやりと笑う。


「この魔法研究会の目的、1の親睦を深める事についてはよくやっていると認めます。年に十数回の合宿と称する交流会を開いているのは見事です。

 でもそれ以外、3はまあ例外規定だから除くとして2の便利な魔法及び魔法道具を開発する、いい機会ですのでこれにも力を入れていただきたいところです。

 折角、M組以外の方と窓口が出来たのですから」

 そう言って歩美さんは僕の方を見る。


「それっと僕の事ですか」

「そのようだぞ」

 これは当然会長だ。


「魔法とか魔法道具とかって、どんな風に開発するんですか」

 歩美さんは小さく頷いて口を開く。


「その辺は私より詳しい人に聞いた方がいいでしょう。誰がどういう技能を持っているか、私より会長の方がよく知っていますよ。とりあえずこの合宿が終わったら紹介出来るように、今のうちから考えておいた方がいいでしょうね」


 会長はふっとため息をついた後。

 軽く頷いた。


「了解だ。相変わらず1人で何か気づいて企んでいるようだけどな」


 歩美さんは笑顔のまま表情を変えない。

「私は私の方法論でしか動けないのですよ。人には分とかいうものもありますし」


「よく言うよ」

 歩美さんは会長のその台詞に肩をすくめて見せて。


「それでは失礼しますね」

 そう行って去って行った。


 ある程度距離が開いてから。

 会長はふうっとため息をつく。


「どうしたんですか」

「あとで説明するさ、麻里と遊里を加えて」

 会長はそう言って。


 そして更に。

「面倒な事になるのかな」

 そう小さく呟いた。

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