第28話 魔法組の生徒会長

「そう言えば随分倒れていますけれど、それくらいあのテニスって楽しいですか」


「そうですね」

 調理しながら明里さんが答えてくれる。


「普段は魔法はほとんど使えない。

 あの学園の特別科内だけならある程度は使える。でも結構限度はある。付近には一般人もいるから。

 魔法を思うまま全力で使える機会なんて、まず滅多にない。


 でもあのテニス。禁止行為以外は魔法を思う存分使える。魔法の使い方も自分なりに工夫可能。しかも相手もいるしゲーム性まである。


 そんな訳で、魔法使いとしては間違いなく楽しい。私はああいうアクティブ系な魔法は使えないけれど」


「私の魔法もアクティブ系ではないです。でも未来はあっていると思う」


「ああ、次回からは参加させて貰うぞ。風も冷凍系も得意だしさ」


 と、大量のスパゲティを作った時点で気づく。


「そう言えば倒れている人が結構いるけれど、その人の分はどうするんですか」


「問題無い。麻里副会長は治療魔法と回復魔法が得意だから。昼食ぎりぎりには全員回復させる筈」


 色々な才能というか魔法持ちがいる訳だ。

 有効活用出来れば確かに色々便利だろう。


 さて。スパゲティとソースが大量に出来たところで。

 ぞろぞろと食堂に女子高生がやってくる。

 試合が終わったらしい。


「そう言えば試合はどうなったんですか」

 見かけた舞香さんに尋ねる。


「真奈美さんの勝ち。魔法属性というより魔力量の差です。美菜美さんは決勝時にもうあまり魔力残量がありませんでした」


 なるほど。

 皆さんあんなに派手に魔法を使いまくったら魔力も足りなくなるはずだ。

 そう思ったら。

 大広間で倒れていた連中もやってきた。

 どうやら無事回復した模様だ。


◇◇◇


 食事の時間。

 スパゲティを山盛りにして食べている会長に聞いてみる。


「そう言えばこの魔法研究会、本来は何をするサークルなんですか」


「私を崇め奉る組織だ」

 会長がそう言って無い胸を張った直後。


 パシーン!

 会長の頭をハリセンが一発。


「何をする歩美」


「少しは真面目に答えてあげましょうね」

 また知らない先輩。

 会長とは逆に大柄で、ちょっと大人っぽい雰囲気の女子だ。


「どうも初めまして。3年の成城歩美せいじょう あゆみです。持ち魔法は今見たとおりの物品具現化、まあ魔力が必要なのでそれほど時間持たせませんけれど」


 確かに会長の頭を打ったハリセン、床でもう消えかけている。


「クラス委員で特別科生徒会長を兼任している、私の仇敵だ」


「という訳で魔法研究会の趣旨を説明させますね」


 今度はハリセンでなく金だらいがわざとらしく上に出現している。

 固定されているようで落ちては来ないが脅しの意味なのは明らかだ。

 会長が仕方なくという感じで答える。


「魔法研究会の活動目的は3つ。

 1 魔法使い同士の親睦を深める

 2 便利な魔法及び魔法道具を開発する

 3 その他魔法使いおよび世界に寄与する活動を心がける

以上だ」


「はいよく出来ました」

 金だらいが消えた。


「まあこんな会長でも人望はあるようですし、活動も割と精力的にやっています。そんな訳でまだ魔法研究会は生徒会の不要活動削減リストには入っていません」


 おいおいおい。

 厳しいな。

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