第26話 テニプ●以上に凶悪です

 そんな感じで。

 僕が駆けつけてから約20分後。

 朝食は無事に完成した。


 やってみてわかったが魔法は色々便利だ。

 特に加熱魔法と冷却魔法。

 この時間でほろほろに崩れた鶏の煮こごりなんて普通は作れない。


 あとは人海戦術で盛り付けて。

 テーブルに運んで。


 今朝の御飯は、

  ○ 御飯

  ○ アオサと豆腐のみそ汁

  ○ 鶏肉のにこごり

  ○ ほうれん草と卵の炒め物

  ○ 納豆と生卵、固まった鶏油チーユは各自お好みで

という感じ。


 鶏油とはまあ、要するに鶏肉を煮込んだ際に出た油だ。

 鶏肉を加熱して冷やすと上に浮いて固まる。

 それをスプーンで取って別容器に移した代物だ。


 ラーメンでもあるまいし朝から油っぽいだろうと僕は思う。

 でも御飯の上にのせて醤油かけて食べる。

 そんな身体に悪そうな事をしている魔女も多かったりする訳で。


 ただおかず全般味が薄めなのはなかなかいい。

 僕もコレくらいの方が好きだ。


 驚いたのは皆さんけっこう食べる事。

 僕は朝は茶碗1杯で充分なのだけれど。

 食べ終わったらよってたかって片付けて。


「では次は9時からテニスコートでハイパーテニスです。今年からは空間操作魔術は禁止です。皆様ふるってご参加下さい」

 その時、ふと僕は気づいた。


「先生は」

 朝食に来ていないようだけれど。


「基本的に何か無い限り先生は別行動です。勝手に車で御飯を買い出しに行ったりしますし。だから気にしないで大丈夫です」

 と舞香さん。

 なんともいい加減なと思う。


 でもきっと必要な時はちゃんと出てくるのだろう。

 昨晩の百鬼夜行のように。

 これはきっとお互いの信頼関係という奴だ。

 自信は無いけれどそういう事にしておこう。


 ◇◇◇


 これはテニスだ。

 きっとテニスだ。

 たとえコート周囲に危険防止の網が張ってあったとしても。

 観戦しつつそう思う。


 見ている分には面白い。

 魔法を使った超必殺技みたいなのがラリーしながら出まくるのだ。

 ちなみに解説は2人。

 何でもわかる魔法持ちの舞夏さんと3年で精神魔法使いの聡美さん。


 舞香さんでないと試合で何が起きているかリアルタイムで把握出来ないらしい。

 さらに言葉では球技に追いつけないので、聡美さんの意志伝送魔法を使っている。

 漫画の解説コマ分の台詞も実況しながら挟む事が出来る訳だ。


 さてこのテニスの試合。

 肉体強化魔法はほぼ全員使っている模様。

 この魔法は初歩なのでほとんどの魔法使いが使えるとの事。

 問題はそれ以外の魔法だ。


「さあ雪恵選手、サーブを打つ。これは氷魔法と風魔法混合だ。凍って全く弾まない球が相手コートに高速で向かう」


「これに対する生明選手、あ、これはえげつない。空気の層で自分の自分のサービスコートを斜めにガードしている。

 雪恵選手これに気づいたが風魔法での介入間に合わない。フォールトです」


「これは生明選手の頭脳プレーですね。でも次は警戒されるでしょう」

 なんて言うのはまだ可愛い方だ。


「真紀選手しぶどい。またネット前で追いついた。でもボールに魔法をかける余裕がない。それでもボールは時速180キロで美菜美選手コートへ」


「真紀選手は基本的に足を使いませんからね。空中を自在に飛べますから」


「真紀選手は足が不自由な分、普段は車椅子で腕も鍛えています。更に魔法強化したこの腕力は馬鹿に出来ません。

 さあ美菜美選手、返ってきた球を無理矢理念力で止めた。思い切りよくラケットを振りかぶる。出た、遷音速サーブ」


「音速に達するとボールが自壊してフォールト扱いになりますからね。よく学んでいます」


「真紀選手それでも追いつく。でも加速度で身体は大丈夫なのか。ネット際へ叩き付けるように返した」


「でも飛行姿勢がふらふらしていますね。今の加速は身体に影響が大きいようです」


 こんな訳のわからない状況でラリーが続いていたりする。

 まあ解説聞きながら見ている分にはなかなか面白い。

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